ホーム > ブログ > 人事ブログ > 正社員化の受け皿としての限定正社員制度のポイント

関連ブログ
新着記事
カテゴリ
月別アーカイブ

正社員化の受け皿としての限定正社員制度のポイント

2015年07月10日 カテゴリ:人事制度

執筆者:山口 俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。

2014年頃から、ユニクロ、イケア、スターバックス、ワタミ、日本郵政など、小売業・外食産業を中心に、非正規社員を正社員化する動きが目立つようになりました。

これまで、正規雇用を打ち出した企業の多くは、勤務地や職務を限定した「限定社員制度」を受け皿としています。勤務地などを特定することで、対象者は選択しやすく、人件費増加のインパクトを抑制しようとしているのです。

限定社員制度を設計する場合には、以下の要素を検討しなければなりません。

1.限定される対象
①勤務地 ②職務 ③労働時間のいずれを対象とするか。一般的には、①勤務地と②職務を限定するケースが多いと思われます。③労働時間を限定した場合、パート・アルバイトとの明確な区分が難しくなるからです。
小売業、外食業などでは、夕方以降や土日が繁忙となる店舗が多く、その時間帯をはずした限定は認めづらいという事情もあります。
勤務地については、特定事業所(店舗)に限定するか、通勤可能な事業所とするか。おそらく人員コントロールの観点からも、後者を選択する企業が多くなるでしょう。

2.賃金水準
これまでに(勤務地)限定制度が存在する企業の場合、既存制度を活用するか、新たに制度を設計し直すかの選択を迫られます。
過去の勤務地限定制度の多くは、転勤可能であった正社員が何らかの理由で選択する、もしくは新規での採用を想定していました。したがって、処遇についても正社員賃金の◯%ダウン(概ね5~20%程度)、といった設定を行ってきました。
ところが、正規雇用化の検討においては、「非正規社員が魅力を感じつつ、収益上継続可能な」賃金水準を設定しておく必要があります。
また、給与・賞与だけでなく、退職金や福利厚生、教育研修に関する制度改定についても、検討しておかなければなりません。

3.職務の再設定
平成27年4月からのパートタイム労働法改正により、「パートタイマーの差別的処遇の範囲拡大」が盛り込まれました。パートタイマーや契約社員の時と同じ職務のまま、処遇だけを改善するわけにはいかなくなります。限定正社員に転換しない人たちとの処遇差を、正当化しづらくなるからです。
(非限定の)正社員と同一職務としておくケースも考えられますが、今度は、勤務地限定という条件だけで極端な賃金格差を設けてよいのか、という問題が発生します。
その場合、「正社員と非正規社員の中間」のような職務を検討することになるのではないでしょうか。

4.選択条件
希望者全員か、選択のための条件を設けるか。実際には、人員コントロールの観点からも、勤務時間や人事評価、試験合格といった条件をクリアした候補者の中から、会社が選別することになるでしょう。
たとえば、「フルタイム勤務、土日勤務、夜勤シフトも可能」かつ「人事評価が標準以上」といった基準設定が考えられます。

ただし、以前の当ブログ「地域限定社員制度の難しさ」で述べたように、「(地域)限定社員制度」の本当の難しさは、制度設計ではなく運用にあります。特に中小企業においては、職務区分などが曖昧になりがちですので、慎重に検討されることをお勧めします。

バックナンバー

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。