部下が上司を評価する360度評価

360度評価とは
前回の「評価の運用ルール」のなかで、誰を評価者とするかという点について述べた。 通常は、被評価者の上司を評価者とすることになる。 この場合、自分の部下を評価する役職者は、自分の上司からは評価を受けることになるが、部下からの評価を受けることがない。この通常はされることのない部下からの評価を実施しようというものが360度評価である。
  
つまり360度評価とは、その名が示すように、単に上から(上司から)の評価だけでなく、下から(部下から)の評価や横から(同僚から)の評価も含めて、上下関係の区別なく、その被評価者を取り囲む多くの人が評価を実施する取り組みである。
また、単に被評価者と同一部門の社員だけでなく、他部門の上司や同僚、部下にあたる社員(後輩など)などが評価することもある。さらに場合によっては、取引先の関係社員など、社外の人間に評価を依頼することもある。
 
360度評価の目的
ではなぜ、このような上司だけでなく、同僚、部下などによる評価を実施する必要があるのであろうか。
一つ目は、評価者に起因するものである。直属の上司といっても、常に被評価者である部下と一緒にいるわけではないので、必ずしも正しく評価できるとは限らない。また、評価者による評価傾向が影響して正しい評価ができないこともある。そのため、評価の目を多くして、できるだけ評価の精度を上げようということである。
 
次は、被評価者に起因するものである。被評価者が上司に接する態度と同僚や部下に接する態度を変えていることがある。わかりやすく言うと、上司に対してゴマをするようなことである。(現実的には、上にゴマをするケースだけではないが。)こういった場合、上司が部下をよく観察し、正しく評価しようとしても、その上司が観察している面だけが、その被評価者の全てではないので、正しく評価できない。そのため、先程と同じように評価の目を多くしようということである。
 
最後は、他の社員に起因するものである。通常であれば、管理者であっても他部門の部下に相当する社員を評価することはない。まして、同僚が同僚を、部下が部下を評価するということもない。しかし、この360度評価を実施することによって、通常では他人を評価することのない社員が評価を実施するので、その社員の評価に対する意識を高めることができる。また、他社員を評価しなければならないことによって、他社員の仕事ぶりをよく観察するようになる。その結果として、他社員の良いところに気付くようになり、自分の業務に活かすことができる。また、良くない点がある場合には、アドバイスや助言を与えることもできるし、自分にも同じようなことがないかどうかチェックする機会にもなる。
 
次回は、360度評価を実施する上での注意点について述べる。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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