中小企業で評価・賃金制度は必要か
賃金制度
筆者がご支援に入る前の段階でのご相談で良く受ける質問の一つに、「評価・賃金制度を整備したほうが良いかもしれないと思う一方、ウチのような中小企業で本当に必要なのだろうか」といったものがあります。今回は、この問いについての筆者の考えを整理したいと思います。
この問いについて考えるにあたり、評価・賃金制度でできることを改めて整理してみると、主に次のようなことが挙げられます。
【評価・賃金制度でできること】
①公平感、納得性のある賃金決定
②効果的な人材育成
③将来的な賃金の見える化
以上が評価・賃金制度でできる主なこととなります。これらについての課題があり、制度導入によって改善が見込めるようなケースだと、中小企業であっても制度導入を検討してください。
逆に言うと、上記について、将来的にも課題がない、あるいは制度導入をしても改善の見込みがないようなケースでは、導入をする必要がないとも言えます。具体的に考えられるケースをそれぞれの観点から挙げてみたいと思います。
①公平感、納得性のある賃金決定 の観点
「明確なルールはない中で経営者が賃金を決定しているが、社長へのロイヤリティが高く、社員の納得度が高い」といったような状況では、本観点を理由に制度導入をする必要はないでしょう。
ただし、社長交代や社員数規模の拡大等による導入の可能性は念頭に置いておく必要はあります。社員数規模に関しては、筆者の主観では、経営者1人で社員個々の状況を十分に見れるのは、社員30名程度までだという感覚があります(優秀な右腕がいると、その倍になるようなイメージ)。当然、組織構造や事業内容によっても異なってきますが、1つの参考としてみてください。
②効果的な人材育成 の観点
「求められることが明文化されていなくとも、日々の指導の中で十分に伝え、育成できている」「教育体系が整っており、育成はうまくいっている」などの状況であれば、本観点を理由に制度導入をする必要はないでしょう。ただし、中小企業こそ、こうした点は課題になりがちであるため、人材育成ツールとしての導入は検討の余地があるでしょう。
③将来的な賃金の見える化 の観点
社員にとっては、将来的に賃金がどのようになっていくのかという点は非常に気になっています。制度がなくとも、自社のモデルケースのようなものがいくつか示せていれば、ある程度はよいかもしれません。
しかし、制度がない中でモデルケースのようなものを示すことが困難になりがちであるため、社員から将来的な賃金がどうなるか分からないといった声が上がっているケースでは、制度導入による解消も検討できるでしょう。
以上、3つの観点で整理してみました。いずれか1つ観点からだけでも課題があり、制度導入によって改善が見込める場合、制度導入は十分に検討できます。自社の制度導入の是非を検討するにあたり、ご参考ください。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。