職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成する場合の留意点は?
人事制度
以前のブログにおいて、「職務分析について~職務記述書の作成方法~」というタイトルにて、実際に職務記述書を作成する場合の一般的な流れ(作成ステップ)を解説しました。その後、世の中のジョブ型ニーズの高まりもあり、弊社でも職務記述書の作成をご支援する機会が徐々に増えています。そこで、今回のブログでは、実際に職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成する際の“留意点”について触れたいと思います。いずれも、実際に職務記述書を作成するにあたって重要なポイントになりますので、是非、ご参考ください。
【留意点①】職務記述書を作成する「目的」を明確にし、目的に沿った手段やアウトプットを採択する
1つ目の留意点は、職務記述書を作成(=職務分析)するにあたっては、「何のために作成するのか」「職務記述書をどのように使うのか」をあらかじめ明らかにしておき、その目的に沿った作成方法や職務記述書フォーマットを使用する、という点です。
職務記述書の作成方法やフォーマットについては、様々な方法・パターンがあります。従って、目的や用途を十分考えずに、他社の事例やセミナー・書籍の事例などを安易に採用してしまうと、手間をかけたわりには使えない(もしくは使わない)・・・というケースに陥ってしまう恐れがあるため、注意が必要です。
【留意点②】対象“職務”は、「担当者が実施している仕事」ではなく「本来的に求められる仕事」である
2つ目の留意点は、職務記述書を作成するにあたっては、「今の担当者が実施している仕事の内容/レベル」ではなく、「本来的に求められている仕事の内容/レベル」を職務分析の対象とする、という点です。
例えば、ある職務について、人材不足の都合により、あまり優秀ではない社員がその職務を担当していたとします。その時、当該社員が現在遂行している仕事の内容やレベルで職務記述書を作成してしまうと、本来のあるべき職務像(=会社が求める仕事の内容/レベル)よりも下方にずれてしまうことになります。
以上のような状況に陥ることを避けるためには、職務記述書を作成するにあたっての職務アンケート・職務ヒアリングの対象者を、本人ではなくその上司(もしくは本人と上司)とすることが必要です。
【留意点③】職務記述書に記載した仕事の内容は、一定期間ごとにメンテナンスを行う
3つ目の留意点は、職務記述書の記載内容(仕事内容、期待成果、必要能力など)については、定期的に見直しを行う、という点です。
業種業態や職種によってばらつきはあるものの、職務の内容やレベルについては、年月が経つと変化する可能性があります。当然、実際の仕事内容と職務記述書の記載内容に乖離が生じていれば、当該記述書の有用性は低下してしまいます。また、職務記述書の記載内容に基づいて職務評価を行い、当該結果によって、等級ランクや基本給額を決定する仕組み(=職務等級や職務給)を採用している場合は、職務価値と処遇水準にずれが生じてしまうことにもなります。従って、社内外の環境変化などを理由として職務の具体的な内容が変わった場合、できるだけ早期に然るべき見直しを行うことは、職務記述書の作成・運用において必要不可欠なプロセスになります。
執筆者

岩下 広文
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)
1999年大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。
人事コンサルティング歴は20年以上にわたっており、人事制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における多様なテーマでのコンサルティング経験を有する。
また、過去に担当したクライアントの規模も、中堅・中小企業から数千名の大手上場企業までと、広範にわたっている。
きめ細やかな制度設計と顧客の実状を踏まえた提案・助言に定評がある。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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