賃金の外部公平性
賃金制度
冬のボーナスの支給時期である。
ニュース等のメディアを見ていると、企業業績の急速な悪化や先行きの不透明感から、前年度実績よりも減額されているケースが多いようである。気温は暖冬傾向なのに、懐は厳冬気味・・・といったところであろうか。
先日、大学時代の友人と久しぶりに会ったときに、今回の冬のボーナスの話になった。お互いに、「最近は会社業績が厳しいからねー」と前置きをしながら、やはり、相手がどの位のボーナスをもらっているのか気になっていた。ちょっとした牽制(?)を経た後、最終的にはお互いがいくらもらっているかを公表することになった。そして、結果として高かった方は自己優越感にひたり、低かった方は悔しさを覚えたのである。。。
友人や身近な人間との間で、上記のようなやりとり、すなわち相手がどのくらいの給与や賞与をもらっているのかを公表しあうことは、よくあるケースではないだろうか。何気ないと思われるこのようなやりとり。でも実は、賃金制度を考える上で、重要なことを示唆している。
それが、表題の「外部公平性」ということである。
賃金制度における「外部公平性」とは、「他社水準に対する自社水準の乖離」を示す言葉である。他社よりも低ければ外部公平性が保たれていないことになり、逆に他社と同等もしくは他社よりも高ければ外部公平性が保たれていることになる。
賃金制度改定に伴い、新しい賃金水準を決定するに際して、我々コンサルタントは殆どのケースにおいて、顧客企業の同業他社水準や同規模他社水準のベンチマークを実施する。そして、結果として顧客企業の賃金水準が他社水準よりも低ければ、人件費原資の制約を踏まえた上で、改善の提案を行うことが多い。
このような提案をすると、顧客企業の担当者様の中には、「外部の水準なんてあまり関係ない」とおっしゃるケースが稀にある。確かに、自社の賃金水準は、最終的には自社の判断に基づき決定されるべきものである。しかしながら、社員の多くは、上述の例のように、他社の人間がどの位の給与や賞与をもらっているかについて、高い関心を持っているケースが多い。そして、もし、他社の水準よりも自らの水準が低ければ、モチベーションを下げる結果になりかねないのである。
以上の通り、賃金の外部公平性は、社員のモチベーションに大きく影響する要因である。従って、企業ごとに支払い能力は異なるものの、可能な限り外部公平性の担保を考慮することが、人材マネジメント上は必要不可欠である。
景気の減速が急速に進みつつある現況下においては、そこまで考える余裕はないかもしれが、一方で、将来の成長のためには社員のモチベーションを維持しておくことが必要である。今一度、自社の賃金水準が外部公平性を担保しているかどうかについて、検証することをお勧めしたい。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。