「職種別賃金」と「コース別賃金」について
賃金制度
今回のブログでは、賃金制度の種類として、「職種別賃金」と「コース別賃金」について解説を行う。
まず、「職種別賃金」というのは、社内の複数の職種ごとに賃金水準や昇給ルールを変える仕組みである。例えば、職種Aは市場価値が高いので賃金水準を高くしたいが、一方で職種Bは定型的作業が主なので極力水準を抑えたい場合などは、この職種別賃金が適している。なお、職種の分け方であるが、細かい職種ごとに分けるパターンと、職種をある程度集約した「職群」単位で分けるパターンがある。
この職種別賃金については、日本企業の場合、職種ごとに賃金の水準/仕組みを分けること自体に対して、社員や組合の反発がまだまだ大きく、導入のハードルは依然として高いと言える。
もう一つは、「コース別賃金」。これは、複線型のキャリアパスを導入している場合に、そのコースごとに賃金水準や賃金体系を変える仕組みである。よくあるケースとしては、①「管理職クラスを役割で区分するパターン」や、②「勤務地の異動有無や異動範囲で区分するパターン」などである。
具体的には、①については、管理職クラスを「役職者であるライン管理職」と「専門業務に特化する高度専門職」にコース分けした上で、それぞれに合った賃金水準や賃金体系を導入することになる。
②については、例えば社員を「全国勤務と地域限定勤務」にコースを分けるパターンがある。地域限定勤務社員とは、その名の通り、特定の地域内でのみ勤務する社員(例:転居を伴う異動をしない社員)のことであり、その分、一般的には賃金水準を全国勤務社員より下げることになる。なお、管理職については、全国勤務社員のみとするケースの方が多い。
<(1)職種別賃金の概要・留意点>
●社内の複数の職種ごとに、基本給の水準や昇給ルール、諸手当の種類、賞与の水準などが異なっている賃金制度
●職務価値に応じた賃金水準の設定や、職務特性を踏まえた昇給制度の設定により、コスト競争力や採用競争力の
強化につながる
●但し、特に労働組合がある企業においては、導入のハードルが非常に高い。
<(2)コース別賃金の概要・留意点>
●複線型人事制度の下で、コースごとに基本給の水準や昇給ルール、賞与の水準などが異なっている賃金制度
●キャリアパスや勤務形態などを複線化することにより、役割・仕事に応じた賃金の適正化や、多様化する社員ニーズ
への対応といったメリットがある
●但し、単一制度の場合よりも制度運用の手間がかかることになる
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。