賃金設計講座(3): 賞与制度について⑧
賃金制度
前回のブログでは、賞与制度を設計する際の3つ目の観点である「賞与原資算出ルール」について、具体的な設計方法を中心に解説した。今回のブログにおいては、「賞与原資算出ルール」を効果的な仕組みとして導入・活用していくにあたり、設計や運用に際して留意すべきポイントについて解説していくこととする。
■ 賞与原資算出ルールの設計・運用における3つのポイント
(1)「業績」と「賞与原資・水準」の関係を決めるにあたっては、過去実績に基づき十分な試算を行うこと
業績連動型賞与制度の設計上で最も重要なポイントとなるのが、「業績指標」と「賞与原資・水準」の関係である。
導入後も定期的な見直しは必要であるものの、不都合があるという理由で簡単に変更することはできない。
従って、設計の段階で十分なシミュレーションを行い、最も適正な算定式や水準を設定しておくことが大切である。
(2)運用性を考慮し、「例外的取り扱い」や「原資・水準の幅」など、柔軟な部分を一部残しておくこと
例えば、会社業績が極めて好調又は不調な場合には、一定の計算式で賞与原資・水準を算出することが必ずしも適当ではないケースもある。そのような場合には、「例外的取り扱い」のケースとして、柔軟に決定できるようにしておいた方がよい。
また、計算式に基づいて原資や水準を確定させてしまうのではなく、ある程度の幅を持たせておき、最終的にはその幅の中で経営陣が決定(もしくは労使交渉で決定)できるようにしておいた方が運用しやすい。
(3)経営環境の変化などを踏まえた上で、制度内容の定期的な検証・見直しを行うこと
上述の通り、過去の実績に基づいてシミュレーション等を行いながら制度内容を決定することになるが、あくまでもそれは過去実績に基づいたものでしかない。
経営環境や事業環境が変われば、業績指標の種類や原資・水準との関係を見直した方がよいケースもある。
以上、賞与原資算出ルールを設計・運用する際に留意すべき3つのポイントについて、それぞれの要旨を解説させて頂いた。上記(2)のポイントについては、賞与原資算出ルールを導入する”そもそもの目的”と矛盾するような内容に思われるかもしれないが、あまり”ガチガチ”な仕組みにしてしまうと、かえって適切な人件費コントロールができないこともあるので、ある程度の柔軟性をあらかじめ持たせておいた方が、結果的には運用性が高い仕組みとなる。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。