■VRIO分析による自社の強み(付加価値)の構築
高い賃上げが可能な会社づくりを行う②(ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する⑯)

前回のブログで高い賃上げを実現するために企業戦略として、社員と協働して取り組むべき7つの視点の 1.『値上げ』を実現できる戦略構築、2.市場構造を考えて、「やるべきこと」・「やらないこと」を明確に整理し、実行する について解説しました。

 

今回は

3.顧客から選ばれる企業となるために自社の強みを磨き、進化させる

をテーマに解説します。

 

■高い利益を生み出すために市場におけるポジショニングよりも大事なこと

高い賃上げを実現するためにも、自社の利益(=付加価値率)を高めるための対策を単なる抽象論ではなく具体的な実行策へと落とし込んでいくことが大切です。

そのためには市場や顧客から選ばれる(指名買いされる)会社となることが重要です。

顧客から選ばれる会社ほど付加価値率が高い傾向にありますし、値上げも実現しやすくなります。

 

この文脈で話を進めていくと、市場や顧客から選ばれるためにも「市場でのポジショニング」が重要である。という議論がよく展開されます。

しかしながら、そもそもポジションを取るための強みや差別化要素があるか否か?について曖昧なまま、ポジショニングの議論が行われていることもしばしばあるように思います。

このようなこともふまえ、今回はポジションを取るための「強み」や「差別化要素」の有無を判断する分析手法をご紹介します。

 

■VRIO分析による自社の強みの分析と再開発

以前のブログでも述べましたが、資本主義の世界では、他社商品・他社サービスとの違い(差異)の大きさが付加価値の違い(差)の大きさとなってくることを述べました。(※但し、顧客にとって全く意味のない違い、価値のない違いは、付加価値の違いや差を生み出さないことは当たり前の前提として捉えてください)

言葉を換えれば、顧客が欲しがる他社にはない商品やサービスを有していたり、多少、価格が高いと感じた場合でも他社に乗り換えできない独自の商品やサービスを持っているほど、付加価値が大きくなることについて解説しました。

 

<関連リンク>

企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて(その4)〔ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する⑤〕

 

そして、競合他社にはない自社ならでは強み(『自社の独自性』、『自社の差別化要素』等)をいかにして形成していくか?というテーマは、企業経営を行う上で『原点』と言っても良い重要事項です。

 

自社の強みについての分析では、巷に良く知られているSWOT分析などを活用されている企業も多いとは思いますが、今回、ご紹介したいのはアメリカの経営学者ジェイ・B・バーニーによって開発された「VRIO分析」というフレームワークです。

 

「VRIO分析」は、自社が保有している経営資源を分析する方法ですが、自社に強みが有るか?無いか?を整理することに役立ちます。加えて、市場において自社が競争優位や持続的競争優位性を築くためにはどのような特徴ある資源を有すれば良いかを判断することにおいても有効な分析手法です。

 

具体的には企業が持つ経営資源を①Value(価値)、②Rareness(希少性)、③Imitability(模倣困難性)、④Organization(組織)の4つの視点から評価するフレームワークとなります。

以下に簡単な解説にてご紹介します。

 

①Value(経済的価値)・・・自社の持つ経営資源は、顧客にとって、どの程度価値があるか?

 

②Rarity(希少性)・・・自社の持つ経営資源は、競合他社に対して、どの程度希少性があるか?(競合他社には同様のもの、もしくは代替できるものが無く、市場において希少性を有するものであるか?)

 

③Imitability(模倣困難性)・・・自社の持つ経営資源は、競合他社が模倣しようとした場合、どの程度マネがしづらいものであるか?

(マネしやすければ希少性があっても時間とともに優位性を失ってしまうため)

 

④Organization(組織)・・・自社の持つ経営資源に対して、効果的に発揮できるように組織的な方針や環境が整えられているか?

 
尚、経営資源という言葉について具体的にイメージしにくい場合は、とりあえず自社が提供する商品・技術・サービス、人材力等という言葉に置き換えて、考えていただいても結構です。

 

上記の4つの視点で、自社にとっての『強み』、言葉を換えれば『付加価値(利益)』の源泉となるものを分析されることをおすすめします。そして、今後の賃上げを可能とするためにも自社の利益をいかにして増やしていくかについて、具体的な作戦を立てることをおすすめします。

 

■VRIO分析の仕方

詳細なVRIO分析を実施したい場合は、弊社のようなコンサルティング会社にお問い合わせいただくのも良いとは思いますが、まずは皆さんの会社で、経営陣及び現場の選抜メンバーなどの小集団でVRIO分析に沿ってワークを実施していただくだけでも、様々な気づきや効果を得られると思います。

そして、分析した結果を以下のようなマトリックスに照らし合わせて、自社の強みの状況を把握し、今後何に取り組むべきかを考え、具体的な実行計画(経営計画や部門計画)に落とし込んでみてください。
 

VRIOフレームワーク

 

この分析プロセスによって、
自社の限られた経営資源を今後いかに効果的に活かすべきか?について、あらためて整理することができます。
そして、中期的な取り組み計画なども具体化しやすくなるため、明日から何に注力すべきか?などについて見定めることも可能となります。
また、社内でこれらの分析内容を共有することで、様々なメリットも生まれます。
例えば、社員ひとり一人においても、日々の業務遂行において、自分は何に注力すべきかが明確になると同時に、それらの取り組み活動そのものに意味や希望を感じやすくなります。そして、自社の強みを形成すること、磨くことに対して、社内で理解と受容度が高まるほど全社を巻き込んだ取り組みが加速していきます。
(それらの取り組みを人事評価賃金制度や教育制度と連動させると更に取り組みが促進されます)
 
分析ワークが完了したら、重要度の高いものからすぐに着手していきましょう。
できることからすぐに着手することは、『④Organization(組織)・・・自社の持つ経営資源を効果的に発揮できるように組織的な方針や環境が整えられているか?』の強化につながります。
そして、競合他社よりも早く着手し、早く体制を整え、早く結果を出すほど、『強み』を生かしやすくなりますし、競合他社に対する参入障壁を築くことも可能となってきます。
 
なぜなら、VRIO分析で観えてきた答えを実際に具現化するためには必ず一定の取り組み時間が必要になるからです。もし、自社と競合他社との比較において、どちらもVRIO分析から取り組むべき方向性や対策が同じものだったとしましょう。
その場合は、早く手を付けて取り組みだした方が優位なポジションをとりやすくなり、模倣困難性を強化するための取り組み(=参入障壁の構築)などにおいても、時間的な優位性が生まれます。(以前のブログでも述べましたが、『時間的な差異』は模倣困難性を生み出す1つの重要な要素となり得ますので、その点も意識して企業経営を行っていくことが大切です。)
 
今回のブログを読まれた方は是非一度、自社の『VRIO分析』を実施してみてください。
 
<関連リンク>
■賃上げ問題について社員と共有する(その1)

■賃上げ問題について社員と共有する(その2)

■賃上げ問題について社員と共有する(その3)

■高い賃上げが可能な会社づくりを行う(その1)

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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