右腕・後継者を育てるための“経営的視点”入門 ~②経験・環境・思考の三位一体で育てる

経営者にとって、右腕・後継者の育成で最も重要なテーマが「経営的視点」である。

前回のブログ(https://jinji.jp/hrblog/15234/)では、その「経営的視点」を、

「中長期的、本質的、俯瞰的に考え、効果性と実現性を踏まえて優先順位をつけながら、大局的に判断すること」であると定義した。

 

では、この経営的視点はどうやって育めばよいのだろうか。

 

①経験をさせる(アウトプット)

経営的視点を育むためには、他の学びと同様に、実際の体験に勝る学びはない。

したがって、経営的視点を養う経験をいかに与えることができるかがポイントとなる。

具体的には、

・部門横断プロジェクト

・部門間調整の役割付与

・経営会議への参加

・経営計画策定プロセスへの参画

・新規事業運営

など、経営的な意思決定に関わる機会を与えることである。

 

また単に機会を与えるだけでなく、各意思決定への関わり方、

あるいは自らの判断のプロセスや判断軸について内省を促すことが肝要である。

その際、経営者との1on1を振り返りの場として活用することも有用である。

つまり、実体験に基づくフィードバックを伴う意思決定経験が、判断軸の形成を促すのである。

 

②環境をつくる(インプット)

上述のような体験の機会を与えることができれば理想的ではある。

しかしそうはいかないケースもある。あるいは経験だけでは心許ないケースもある。

そこで、経営的視点に触れる環境(=インプット)を与えることも有用である。

具体的には、

・経営者との定期的な対話の場

・外部経営者の講話の聴講

・経営者向けの研修受講

・経営者が集う外部コミュニティへの参加

などが挙げられる。

つまり、経営者の思考様式に触れることで、思考パターンを転移させ経営的視点を育むのである。

 

③思考力を鍛える(プロセス)

そしてもう一つは、自ら経営的視点を持てるようにそもそもの思考力を鍛えることである。

 

この「思考力を鍛える」方法を考える上で参考になる概念が、組織学習である。

組織学習には、既存のルールの範囲内で改善を繰り返す「シングルループ学習」と、

前提となるルールや価値観そのものを問い直す「ダブルループ学習」がある。

経営的視点を持って大局的に判断するということは、

まさにこの「ダブルループ学習」を実践することに似ている。

つまり、現状の延長線上ではなく、前提を疑ったり目的に立ち返ったりする

思考習慣を養うことが肝要である。

 

この「ダブルループ学習」を実践するために、具体的には

・ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど思考力を基礎トレーニングする

・「問い」を立てる習慣をつける(「そもそも何のために?本当にそうなのか?」等)
※指導者が日常的にそういった問いを投げかけることも育てる一つの方法である。

・前回ブログでも触れた安岡正篤氏の「思考の三原則」(目先に捉われない、枝葉末節に捉われない、物事の一面に捉われない)など古典や哲学を学び、活用する

などが挙げられる。

 

継続は力なり

以上経営的視点を育むための三つの方法を見てきたが、

これらを単発ではなく、総合的かつ継続的に取り組むことが肝要である。

 

できることから始めてみる。

できていないことをやってみる。

とにかく試行錯誤し続けること。

それが何より大切である。

 

経営的視点は、一夜にして身につくものではない。

継続する忍耐こそ、指導する側もされる側も、最も求められる育成の核心である。

 

 

加えて、「経験させる」や「環境を与える」は、

育てる側が能動的にやろうと思えばできることである。

故に、いかに計画的に意図的に取り入れることができるかが重要である。

しかし一方で、「思考を鍛える」については、

個人の能力や資質にも依存することもあり、なかなか手をつけることが難しい。

 

そこで、この「思考を鍛える」については、次回もう少し解像度を上げて考えてみたい。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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