採用競争力の向上に向けた「賃上げ」について(2)
賃金制度
前回のブログでは、人手不足が深刻さを増す昨今の状況下において、採用競争力の向上に向けた「賃上げ」の必要性を述べた。本ブログでは、賃金引き上げの要否や可否を実際に判断するにあたっての、具体的な検討ステップについて解説する。
検討に際しての具体的な実施事項は、以下の4つの調査・分析ステップに区分できる。
【ステップ1】 同じ業界における世間水準の調査
自社の賃金水準が同業(&同規模)他社と比して高いのか低いのかを調査するものである。もし自社水準が同業他社よりも十分に上回っているのであれば、人材の採用・定着を目的とした施策として、賃金引上げを優先的実施事項とすべきかどうかについては、十分な検討が必要になる。なぜなら、賃上げをしたとしても、(引き上げの程度にもよるが)それが採用競争力や定着率の向上につながらず、単に人件費のみが上がってしまう恐れがあるからである。
【ステップ2】 自社の人件費水準の妥当性検証
現在の賃金水準が会社の業績にどのような影響をもたらしているかを調査するものである。要は、財務的な側面から、そもそも賃金を引き上げる余力があるのかどうか、という点である。もし人件費が利益を圧迫しているような状況にあれば、残念ながらすぐに賃上げを実施できる環境にはないため、まずは引き上げ原資の創出に向けた経営施策を検討・実施することから始めることになる。
【ステップ3】 過去数年間の採用活動/採用状況の分析
仮に、労働市場において人材を思うように採用できていない状況にある場合、その要因がどこにあるのかを調べるものである。もし賃金以外の部分にその理由があるようであれば、そこをターゲットとした採用戦略を検討・実施することが必要である。そうしないと「賃金を引き上げたのに人が採れない」という残念な結果を招きかねない。
【ステップ4】 社員意識調査及び過去の退職理由の分析
特に、既存社員の定着化に関する部分ではあるが、離職が相次いでいる場合、まずはその根本的な理由を探る必要がある。実際には賃金以外の部分で問題があるケースも多く、その場合まずはそこを解決しない限り、賃上げによって人を採用できたとしても、結局はまた辞めてしまうという事態が繰り返される可能性が高い。
以上4つのステップで調査・分析を実施した結果、採用競争力の向上に向けて「賃金水準を引き上げるべき、引き上げることができる」という結論が導き出されれば、次の検討課題は「具体的にどのような引き上げ施策を採用するべきか、できるのか?」というテーマになる。これについては、次回のブログにて解説することとする。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。