評価者と作る”人事評価制度”②

今回は、人事評価制度の策定プロセスに評価者を参画させる際の注意点をご紹介していきます。人事制度策定プロジェクトを進めていくにあたっては、”制度の問題”だけでなく、 “評価者の問題”を解決するという目的も念頭において推進することがポイントです。

 

①何のために人事評価制度を構築・改定するのかを理解してもらう

 

中小企業において、評価者はプレイングマネジャーとして活躍されているケースが多いと思います。評価者が通常の業務で手一杯となり、例えば、人事評価が形骸化してしまっているという企業様も多いのではないでしょうか。しかしながら、本来は人事評価も評価者にとって通常の業務の一つです。こういった評価に対する評価者の意識や姿勢の誤り(評価者の問題)を解決することも、プロジェクトの目的の一つです。したがって、まずは何のために人事評価制度を構築・改定しようとしているのかを評価者に理解してもらうことが肝要です。いきなり評価項目や評価基準の検討に入るのではなく、わが社で人事評価制度が必要な理由、更には制度を構築・改定した結果、社員にとってどのようなメリットがあるのかを、参画者全員で共有することをお勧めします。

 

②会社として考える”社員のあるべき姿”を定めておく

 

プロジェクトが進展するにつれて、評価者からは十人十色の意見が出てくることが想定されます。もちろんこれらの意見には現場の事情が反映されており、どれも貴重なものばかりです。しかしながら、すべての意見を採用すると全体として不整合が生じてしまいます。

予期せぬ方向に行かないようにするためにも、評価項目や評価基準の検討に入る際には、まずは会社として考える”社員のあるべき姿”を評価の軸として定めて、参画者全員で共有することが肝要となります。そして、評価項目や評価基準に関する評価者の認識のズレ(評価者の問題)を解決することも、プロジェクトの目的の一つです。したがって、評価者間の認識のズレを減らしていけるように、参画者全員で共通認識が醸成できるまで、徹底的にコミュニケーションを図ることをお勧めします。

 

次回は、これらの注意点を踏まえた上で、実際のプロジェクトの進め方を順番にご紹介していきたいと思います。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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