職務分析・職務評価の実施ポイントと留意点

前回までのブログでは、職務評価における4つの代表的な方法について、各々の具体的な実施方法やメリット・デメリットを解説しました。

今回のブログでは、職務分析・職務評価の総括として、「職務分析・職務評価の実施ポイントと留意点」というテーマで論じていきたいと思います。

 

日本企業において職務分析や職務評価を行うにあたっての留意点としては、様々な観点・内容が存在します。ジョブ型(職務・役割主義)とは考え方・仕組みが大きく異なるヒト型(年功主義・能力主義)の人材マネジメントを採用してきた日本企業にとって、ジョブ型の仕組みに転換することが如何にハードルの高い取り組みであるかということは、想像に難くないと思います。そして、当然ですが、切り替えのハードルが高ければ高いほど、実際の取り組み過程において注意・留意すべきポイントは多くなります。

以上の通り、日本企業が職務分析・職務評価を実施するにあたっては、多くの留意点を考慮しなければなりませんが、本ブログでその全てに触れることは、紙幅の都合上、無理になります。従って、本稿では特に重要と考える3つの内容について、以下、解説いたします。

 

(1)職務分析や職務評価を実施する「目的」に沿った手段やアウトプットを採択する

●職務分析・職務評価の実施方法や職務記述書の体裁には、色々な方式や種類があります。そして、どの方式・種類が「良い/悪い」、「正解/不正解」というわけでもありません。

●従って、どのような方法・体裁を採用し、またどこまで細かく実施するかについては、 職務分析や職務評価の結果をどのように使うのかといった「目的(用途)」によって決めることが必要です(⇒すなわち、あらかじめ目的を明確にすることが必要)。

 

(2)対象職務は、「担当者の現在の仕事」ではなく「本来的に求められる仕事」である

●日本企業で職務分析・職務評価を実施する場合、特に注意すべき点が、この内容になります。具体的には、同じ職務であっても担当する社員によってパフォーマンスは異なるため、 現在の担当者の仕事の内容・レベルが「本来のあるべき職務内容・レベル」であるとは限らない、ということです。

●なお、「本来的に求められる仕事の内容・レベル」を設定するにあたり、「現状での期待値」と「将来の理想像」のいずれをベースとするかについては、人事制度の改定目的に依ります。ジョブ型への切り替えを通じて、仕事のレベル自体をより高めていくのであれば、後者がベースになります。

 

(3)職務記述書の内容や職務評価の結果は、定期的にメンテナンスや再評価を行う

●業種・業態によってばらつきはあるものの、 職務の内容やレベルというのは、社内外の環境変化に伴い、年月が経つと変化する可能性があります。

●従って、人事制度として、職務評価に基づき等級ランクや基本給を決定する仕組みを採用するのであれば、職務記述書のメンテナンスや職務価値(職務等級)の再評価を定期的に行うことは、必要不可欠な取り組みとなります。

 

以上、今回までの数回にわたり、「職務分析と職務評価」というテーマで解説してきました。ジョブ型人事制度を導入するにあたっては、必ずしも職務分析・職務評価の実施が求められるわけではありません。しかしながら、「本当の意味でのジョブ型人事制度」、すなわち、「職務(ジョブ)の価値・レベルに基づいて処遇をきめ細やかに設定する人事制度」を導入するのあれば、この「職務分析・職務評価」の実施は避けて通れない取り組みになります。

兎角、「職務(ジョブ)」や「仕事」の定義が苦手な日本企業・日本人にとって、この「職務分析」や「職務評価」の作業は、量的にも質的にもハードな取り組みになります。もし、読者の企業において職務分析や職務評価を実施されるのであれば、本ブログが多少なりとも参考になれば幸いです。

 

執筆者

岩下 広文 
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)

1999年大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。
人事コンサルティング歴は20年以上にわたっており、人事制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における多様なテーマでのコンサルティング経験を有する。
また、過去に担当したクライアントの規模も、中堅・中小企業から数千名の大手上場企業までと、広範にわたっている。
きめ細やかな制度設計と顧客の実状を踏まえた提案・助言に定評がある。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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