評価者のクセ(評価傾向)について

評価傾向とは
今回は、評価者のクセについて述べる。
評価者のクセとは、前回述べたように、評価する人によって評価点にバラツキが出てくることがあるが、このバラツキの原因となる評価者の特性、特徴のようなものである。 わかりやすい例としては、非常に甘い(良い)点数をつけたり、非常に辛い(悪い)点数をつけたりする管理者がいるということである。
これを評価傾向、もしくは評価誤差と言う。 主な評価傾向としては以下のようなものがある。
 
主な評価傾向
①ハロー効果
ハローとは太陽や月などの周りに見える輪のような光や後光、光輪のことをいう。ハロー効果とは、被評価者の特に優れた点、劣った点または全体の印象に惑わされて被評価者の個々の特性も同様に優れているもしくは劣っていると判断してしまうことである。他者から与えられた情報や学歴、資格などに影響を受けることもある。
 
②寛大化傾向
寛大化傾向とは、評価が一般に甘くなる(良い評価をしてしまう)傾向のことである。部下をひいき目に見たいという心理が働いたり、頼りにしている部下を実力以上に評価したりすることに起因する。また評価後の調整を鑑み、高めに評価する場合もある。
 
③厳格化傾向
寛大化傾向の逆で、評価が一般に辛くなる(悪い評価をしてしまう)傾向のことである。部下を頼りない存在だと見たり、自分の仕事のレベルや基準で部下を評価したりすることに起因する。また、もっと成長してほしいという感情が強く働く場合もある。
 
④中心化傾向
評価が中央に集まってしまう傾向のことである。出来るだけ当たり障りのないようにとの心理が働くもので、被評価者を良く理解していない、自分の評価に自信がないなどが原因である。職場の協調や雰囲気への影響を重視する場合にも、この傾向が出る場合がある。
 
⑤論理誤差
論理誤差は、評価者が各評価項目の間に密接な関係がある(たとえば積極性と責任感)と自分なりの論理を作り上げて、評価事実の各項目への適用を誤ることである。
 
⑥対比誤差
対比誤差とは、評価者自身を基準として評価することによって生じる誤差のことである。被評価者と自分との対比によって評価を行うため、評価者の専門的事項については基準が高くなり、非専門的事項については低くなる傾向があります。
 
⑦近接誤差
近接誤差とは、評価時点により近い期間の行動や成果のほうが、それ以前の行動や成果より印象に残り、近接時点のものをより強く評価してしまう傾向である。
 
⑧逆算化傾向
逆算化傾向とは、評価結果としての処遇(昇給、賞与支給など)を念頭に置き、逆算してつじつまを合わせてしまう傾向である。項目ごとに評価をする前に被評価者の総合的な順位を決めてしまって、その順位になるように評価点をつじつま合わせしようとするものである。
 
よく見られる評価傾向
上記のような評価傾向を少なくするために評価者研修を行なっているが、その研修において、受講者(評価者)に自分にはどのような傾向があるかを質問している。その時の答えとして多いのが、寛大化傾向、中心化傾向、対比誤差、近接誤差であるように感じる。これは、やはり、部下に対する遠慮が働いていたり、自分との比較や最近の出来事に基づく評価など、安易な評価に陥っていたりする印象を受ける。
これらの評価傾向は、クセのようなものなので全く解消されることはないが、評価者が意識をすることによって少なくすることは可能である。
 
次回は、評価傾向を少なくして評価のバラツキを抑えるために必要な観点、取り組みについて述べる。
 
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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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