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<中堅・中小企業における"ジョブ型"人事制度の可能性①

2021年12月01日 カテゴリ:人事制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 上席コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

今回と次回(以降)のブログでは、「中堅・中小企業における"ジョブ型"人事制度の可能性」について解説します。具体的には、いわゆる「中堅/中小規模の企業」にとって、この"ジョブ型(=職務・役割主義)"の人事制度というものは導入すべき仕組みなのか、また導入したくでもできる仕組みなのか・・・という観点での論稿となります。なお、"中堅/中小企業"の定義には色々ありますが、本稿ではおよそ「正社員数で500名」くらいまでの企業、というイメージで捉えてください。

 

日本企業における"ジョブ型"人事制度は、どちらかと言えば、これまでは大手企業や上場企業を中心に導入が進んできており、中堅/中小企業の場合には導入に際して(大手・上場企業との比較で)ハードルがある、というのも事実です(※次回ブログで解説)。しかしながら、その一方で、中堅/中小企業"だからこそ"、"ジョブ型"の人事制度を導入すべき、という理由もあります。

その1つ目の理由は、中堅/中小企業では「社員の異動が少ないため、結果的に、それぞれの仕事(=ジョブ)において"スペシャリスト"が求められる」という点です。日本の大手企業の中には、積極的に人材ローテーションを実施し、できるだけゼネラリストを育てていく方針を採用している会社も依然として多いですが、他方、社員の数・質の面で自ずから限界がある中堅/中小企業の場合、計画的/積極的なローテーションは難しいのが現実です。限られた人数の中で社員を異動させると、仕事が一気に滞ってしまう(かつ、人的スラックに乏しい中堅/中小企業では生産性が大きく下がる)からです。

従って、中堅/中小企業においては、意図せずとも「特定の職種や職務に特化した社員」が大多数を占めることになります。このため、そのような"特定の職種・職務特化型"の社員をより有効的に活用してくための人材マネジメント手法として、仕事の価値/レベルに応じた人事制度を採用し、自らの仕事における専門性や付加価値性を高めてもらうよう意識付けをしていくことが考えられます。

なお、余談になりますが、同期社員や同年齢社員が一定数いるような大手企業の場合、ある程度の階層までは"横並びの処遇水準"を現実的には意識せざるを得ないですが、ボリュームのある新卒一括採用を行っていない中堅/中小企業であれば、そのようなことを意識する必要はほとんどありません。このような点においても、中堅/中小企業については、社員一人ひとりが担当している仕事の価値/レベルにフォーカスした賃金水準を適用しやすい環境にある、と言えます。

中堅/中小企業だからこそ、"ジョブ型"人事制度を導入すべき2つ目の理由は、大手/上場企業よりも一般的には財務基盤が弱いとされる中堅/中小企業の場合、人件費コントロールがより重要なマネジメント要素となるため、「仕事(=ジョブ)」の価値に合った賃金を支払う仕組みというのは、その意味においても非常に好都合であるという点です。 

従来型の日本企業によく見られる問題として、年功的/能力的な人事制度の下、年齢が高い社員ほど「仕事の価値<賃金水準」といった状態になりがちである、という点が挙げられます。人員構成が歪でなければ人件費管理上は大きな問題にならない(例:高度成長期の日本企業など)のですが、逆に社員の高年齢化が進み"上が重たい"人員構成になってくると、自社内の「仕事の価値と賃金水準のバランス」が崩壊し、結果、人件費の高騰を招くことになります。従って、中堅/中小企業がそのような状況に陥ることを回避する手段としても、実際に担当している仕事の価値で賃金を支払う仕組み、すなわち「仕事の価値=賃金水準」を実現できる人事制度の導入を検討すべきと言えます。

 

次回(以降)のブログでは、「中堅・中小企業における"ジョブ型"人事制度の可能性」に関する2つ目のテーマとして、「構築・導入のハードルと対処方法」について解説したいと思います。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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