中途入社・休職・異動時の評価はどうするべきか?

人事評価は通常、評価期間中の勤務に対し、上司である評価者が評価します。ところがそれに該当しない“イレギュラー”が生じます。具体的には、①中途入社・復職などで評価期間の途中から勤務が始まる場合、逆に②休職などで評価期間中に勤務が停止する場合、③異動などにより評価期間中に評価者(上司)が変わる場合です。
しかし、こうした事態への扱いが評価制度上で明確に定義されていない企業が少なくありません。本稿では、これらの“イレギュラー”ケースにおける評価・処遇反映の考え方と、留意すべき内容を整理します。
 
①評価期間中に勤務が始まる場合
評価期間の途中で勤務が始まる場合、可能な限り他の社員と同条件で扱い公平性と説明可能性を担保するのであれば、「勤務していた期間については評価を行い、処遇にも反映させる」と良いでしょう。
ただし、中途入社などでは、業務習熟や本来の能力を発揮するまでに時間を要することがあります。その場合、公平性や説明可能性よりも定着を優先するのであれば、一定期間は評価を実施せず、賞与は寸志とする運用も一案です。また、評価対象期間が1カ月しかない、あるいは勤務開始直後に数カ月の研修を要するなど、現実的に評価が困難なケースもあります。その場合は、評価を実施するために必要な在籍期間(例:3カ月以上)をあらかじめ定めておくとよいでしょう。評価実施に必要な在籍期間は、評価期間の長さや業務特性を踏まえ社内の一般的な業務に照らして設定することになります。
 
②勤務が停止する場合
休職などにより評価期間中に勤務が停止する場合、①と同様に公平性と説明可能性を優先するのであれば、「勤務していた期間については評価を行い、処遇にも反映させる」ことになります。
もっとも、勤務停止中の評価と処遇反映は、事由によって判断が分かれる場合もあります。なかでも産休や育休、介護などによる休職の場合、休職期間中は評価・処遇の対象外とする会社が多いでしょう。一方で、安易な理由による自己都合休職を抑止したい場合、一定の評価とする方法も考えられます。その際は判断に困らず、恣意的にならないよう、どの休職事由を対象とするかを社内で明確化しておくことが重要です。
 
③評価期間中に評価者が変わる場合(異動など)
評価者が評価期間中で変わる場合、ルールを厳密にするのであれば、異動前後の上司がそれぞれの評価期間を評価し、在籍日数に応じて評価結果を按分・調整する方法となるでしょう。現実的には勤務期間の長短を問わず期末の評価時点での評価者が評価するといった方法もあります。しかし、評価を判断できない期間が生じることで不公平感を招く可能性があるため、慎重な検討が必要です。その際は、評価時点の上司が異動前の上司の所見を参照して評価する方法もあります。これなら、異動前の評価期間も評価に反映できるため、運用もしやすいでしょう。
ただし、異動によって職種や業務内容が大きく変わる場合は、すぐに成果や能力を発揮しにくいことがあります。セクショナリズム解消や社員の能力形成に向けて組織的に異動を促したいのであれば、異動後に評価が下がってしまうことはその障害となります。その場合は異動直後の一定期間は標準評価未満とはしない(上位の評価はありうる)、といった不利益を回避する取り扱いが考えられるでしょう。
 
評価・給与計算システムの運用上の工夫
上記の対応については、評価・給与計算システム上の設定を整えておくこともスムーズな対応に寄与します。評価システムでは、評価期間中の勤務の開始や停止・異動等に応じて、管理者画面でアラートを表示させ管理の抜けもれを防いだり、また評価対象を判定し評価シートの表示/非表示に反映させたりする設定をしておくとよいでしょう。なかでも評価期間中の異動の際、異動前後の上司がともに評価を行うのであれば、異動前の上司が引き継ぎ時に評価を行い、評価時期には異動後の上司がその評価結果を参照できるようにするといった運用も考えられます。
給与計算システムでは、在籍日数や異動・休職などの事由に応じて処遇反映の按分を自動計算できるようにすることで、月次処理がスムーズになります。また、評価と給与計算を連携できる統合人事システムであれば、発令情報を登録するだけで評価フローや給与按分に自動反映できるものもあり、業務効率化につながります。
 
まとめ
これらの対応ルールは人事部内での検討や取り扱いを決めるだけではなく、規定やマニュアルとして社内にオープンにすることによって、現場でも運用が統一され、社員の納得度も高まるでしょう。
もし自社でのイレギュラーケースの取扱いが明確でないようであれば、社内のマニュアルやシステムの整備を含めて、ルールの明文化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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