人事ポリシー

「戦略的人事」とは、各種人事施策(採用、活用、育成、人事制度…等々)は、その会社の経営戦略や事業戦略、あるいは組織体制や業務体制を下支えするものでなければならないという考え方です。言い換えると、各種人事施策は、戦略や体制を実現していくための手段に過ぎないということです。そのため、どういった戦略や体制で戦っていくかによって、当然人事施策のあり方や方法も当然変わってくるものであり、そこには「論理的なつながり」が求められます。
 
しかしながら、そういった「論理的なつながり」とは関係なく、「わが社はこうありたい」とか「こうはしたくない」といった会社や経営者としての想いや考えがあることがあります。例えば、「うちはリストラしない」とか「新卒しか採用しない」とか。あるいは「一体感を大切にしたいから職種による給与格差は設けない」とか「アットホームな雰囲気の家族的な経営をしたい」とか。これは論理や理屈の世界ではなく、いわば経営者の価値観や哲学の世界です。「人事ポリシー」とは、こういった経営者の価値観や哲学に根差した人事の方向性のことを指します。「戦略的人事」を考えていくときに、この「人事ポリシー」も押さえておかないと、「理屈ではそうなんだけど…」と違和感のある人事施策になってしまう恐れがあります。
 
この「人事ポリシー」を押さえるための観点として、2つ紹介したいと思います。一つは、大切にする対象が「人」なのか「仕事」なのかということです。人の能力とかつながりを重視していく(一体感や家族経営等)のか、仕事の出来や成果を重視していくのか(成果主義・実力主義等)の違いです。もう一つは、人に対する見方が「性善説」なのか「性悪説」なのかということです。「性善説」に立てば、社員に裁量を与えたり、加点的に評価したりといった方向性になるでしょう。逆に「性悪説」に立てば、ペナルティを与えたり、減点的に評価したりといった方向性になるでしょう。
 
このように、人事ポリシーによって、各種人事施策の方向性が変わってくるため、まず会社としてあるいは経営者として、何を大切に経営したいのか、人に対するスタンスはどうなのかといった考え方を整理しておくことも、戦略的人事を進めていくにあたって大切なことなのです。

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

自社の経営に携わりながら、人材・組織開発、経営計画策定、経営相談など、幅広くクライアント業務に従事。中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、17年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら、バランス感覚を備えた、本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント/GCDF-Japanキャリアカウンセラー
iWAMプラクティショナートレーナー

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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