中小企業におけるテレワーク導入
労務関連
新型コロナウィルス感染症の影響を受け、日本企業でもテレワーク(リモートワーク)が常態化していくことになりそうです。
伊藤忠グループのリサーチ会社、マイボイスコムが5月1日~5月5日の時点において実施した『在宅勤務・テレワーク』に関するインターネット調査によりますと、雇用型で働く人のうち、在宅勤務・テレワークの経験者は3割程度、うち新型コロナウィルス感染症の影響により、はじめて経験した人は2割となっています。
(関連リンク:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000891.000007815.html)
政府が打ち出した働き方改革の推進は、思わぬ形で加速化することになった、と言えます。
また調査では、雇用型で働く人のうち、在宅勤務・テレワークを進めることについて「よいと思う」「まあよいと思う」と答えた人の割合は、在宅勤務・テレワークを経験した人では7割弱、未経験者で5割とのこと。雇用される側としては、在宅勤務・テレワークという形での勤務について肯定をする意見が多くなっています。理由としては、 「通勤ストレスの減少」が65.6%、「時間を有効活用できる」「自分のペースで仕事ができる」「気候や交通状況などに左右されず、業務ができる」が各4割弱、などが上位に挙がっています。一部否定的な意見もあるものの、今後は雇用される側の働き方の選択肢が増えていくことは必至であると考えられます。
企業の雇用環境が大きく変化しつつある中、その変化に耐えうる企業体質確保のためにも、雇用する側として「従業員の働く環境の幅を広げておく」ことは重要になってくることでしょう。
テレワーク導入の企業側メリットとしては、一般的には以下のような点があげられます。
・生産性の向上や業務の効率化
・QOLの向上による社員満足の獲得
・遠隔地優秀人材の確保、流出防止
・オフィスコストの削減
・リスクの分散(非常時における一定の事業継続を可能に)
しかしながら柔軟な勤務体制を導入しようとすれば、企業側も様々な対応が迫られることになります。特に中小企業にとっては、インフラ構築や規程整備など、導入までのハードルが高く、実施に至っていない企業がまだ多くあります。
またハード面だけでなく、社員の自己管理力向上のための教育、メンタルヘルス管理の高度化、テレワークに対応した人事評価制度への改定、マネジメントやコミュニケーション構造の再構築など、整備、検討すべきことが山積することになります。
「うちは業務特性上無理だ」「そんな余裕はない」と頭から決めてしまうのではなく、導入規模は小さくとも、できるところから前向きに着手すべきタイミングではないでしょうか。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 70歳雇用時代に向けたシニア社員の活用
- 2024年最低賃金引上げの動きと今後
- 2024年の初任給水準
- 2024年の中堅・中小企業の賃上げ動向 ~中小企業では賃上げに限界感!~
- 70歳までの雇用が義務化されるのは、いつごろか?
- 令和5年度(2023年度)最低賃金はついに全国加重平均で1000円超え
- 2023年の初任給平均の実態と今後
- 2023年の賃上げ動向 ~中小企業は二極化か?~
- 役職手当(役付手当)の相場と設計ポイント
- 中小企業が人事制度を導入する際の留意点
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値②
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値①
- 評価制度の改善に着手する前に②
- 評価制度の改善に着手する前に①
- オンライン会議活性化のポイント②