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業種による中小企業定義の違いは、時代遅れ

2016年03月20日 カテゴリ:人事制度

執筆者:山口 俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。

「中小企業」普段、当たり前のように使っている言葉ですが、その捉え方は人によってマチマチです。

ただし、法律上は一応明確になっていて、中小企業基本法で、「中小企業者」「小規模企業者」は以下のように定められています。なお「常時使用する従業員の数」には、正社員だけでなく、パートアルバイトや契約社員であっても、短期契約者などを除き、継続勤務している人は含まれるということです。

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人事の分野でも、この区分は重要で、例えば中小企業退職共済に加入するには、上記の条件を満たす中小企業でなければなりません。
また、有期社員の正社員化などに活用できる「キャリアップ助成金」も、上記基準に基づく中小企業かどうかで助成金額が異なります。
労働法改正の際に、中小企業に対して猶予措置が適用される場合も、この基準で区分されることが標準的です。

ところが、ここで1つの疑問が湧きます。

企業の大小を定義するのに、資本金や従業員数を使用するのはよいとして、なぜ業種によって基準が異なるのでしょうか?

従業員数が同じ200名の会社であっても、製造業や建設業なら中小企業として扱われて、卸売業や小売業、サービス業では中小企業ではない、と判断されるのです。この場合、「中小企業」として扱われる方が得するケースが大半ですので、後者にとっては納得し難いのではないでしょうか。

中小企業基本法は、もともと昭和38年に制定された法律です。途中、平成11年に物価上昇に対応して、資本金基準は引き上げられましたが、法律制定当初から業種区分自体は設けられていました。

昭和38年といえば、今から50年も前の時代です。当時は、製造業や建設業がどんどん成長していった時期で、今のように大規模な小売業やサービス業は少なったのかもしれません。

ところが、近年では非正規社員の割合が増加し、パートアルバイトも含めた従業員数では、製造業や建設業よりも小売業・飲食業、ホテルなどのサービス業の方が、多くなる傾向にあります。資本金にしても、サービス業や小売業だから少なくて済む、ということもありません。逆に、ファブレス化が進んだ、自社工場を持たないメーカーなどは、多額の資本金を要しないかもしれません。

また、もともとは製造業であっても卸売・小売機能を強化している企業や、小売業がPB商品の製造を行うなど、業種の垣根が崩れてきました。

このように眺めてみると、近年では、中小企業の定義を業種別で区分しておくことに意味があるとは思えません。

先述したキャリアアップ助成金でも、多様な正社員(いわゆる限定正社員)に関する助成金については、全業種共通で300名以下を「中小規模事業主」と位置付けて、従業員数のみで支給額の区分を行っています。

一方、税法上の定義では、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人が中小法人、1億円超の法人を大規模法人と区分しています。

もし、業種区分をなくす場合、どの業種に基準を合せるのかといった議論は必要ですが、時代遅れのルールは撤廃すべきではないでしょうか。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。