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下がった上場企業の人件費は、株主配当へ

2012年02月23日 カテゴリ:人事制度

執筆者:山口 俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。

前回、日本人全体の平均給与は下がり続けている、という話を紹介しました。
では、なぜ会社は給与を上げなくなったのでしょうか?

◇儲からなくなったから?

確かにバブル崩壊から2000年頃までの10年間は、企業の収益力がどんどん落ちていきました。儲からないから、給与を上げたくても上げられない時代が続いたのです。ところが、2001年あたりを底にして、大企業を中心として日本の会社の収益力は回復していきます。少なくとも、リーマンショックの頃までは。

でも全体の賃金水準は上がっていくどころか、年々下がっていった。
ということは、会社は儲かってきたにもかかわらず社員にその恩恵が行かなかったということになります。では、儲かったお金はどこに行ったのか? 社長がフトコロに入れたのでしょうか? しかしながら、この間も社長を含めた役員報酬の平均額は、ほとんど上がっていません。

実は、2001年からの利益改善額に比例して伸びていったものがあります。上場企業の配当金です。バブル崩壊以降、銀行や証券会社、一般企業が手放した株を、外国人株主といわれる海外の投資家が買い、株主に占める外国人の割合は一貫して上昇していきました。バブル期5%程度だった外国人株主の割合は、30%近くにまで上昇し、大きな発言力を持つに至ったのです。

日本国内の企業だけであれば「お互いの株式を持ち合い、友好関係を築きましょう」といった阿吽の呼吸が成り立つ時代も長らく続きました。ところが、海外の投資家にそんな発想はありません。利益が上がってきたのなら、まず株主に配当で還元しなさい、ということになるのです。
かくして、上場企業の利益は、社員にではなく、海外投資家をはじめとする株主に優先的に配分されることになったのです。

◇中小企業は、昇給できるだけの収益が確保できない

一方、「中小企業に外国人株主のことなんて関係ないじゃないか」と思われるでしょう。その通り。中小企業の場合は、この間もそれほど儲かっていなかったのです。 2000年代の景気回復局面では、大企業と中小企業の収益格差が広がった時期でもありました。
大企業は儲けを配当に回したことによって、中小企業は儲からないことを原因として、いずれも従業員の賃金は上がらなかったのです。
経営者も、できることなら社員の給与を上げてやりたい、と思っているのです。でも、上げられない。大企業の利益が改善しているといっても、工場の海外移転やリストラによって人件費を抑えてきた結果の収益改善です。リーマンショック、東日本大震災と続き、これまでは利益が出ている会社でも、今より明るい未来を確信できる会社は一握りでしょう。

すると、不測の事態に備えて、少しでも内部留保で会社にお金を残しておきたいと考えるのが経営者としては至極当然の感覚といえます。周りの会社も昇給を抑えているとあれば、自分の会社だけ給与水準を上げるわけにもいきません。そんなに余裕があるのなら、もう少し商品の値段を引き下げてよ、といった取引先からの圧力がかかるからです。
 別に従業員をコキ使って搾取してやろうなんて思ってはいないけれど、人件費は上げるに上げられない、というのが多くの社長の本音なのです。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。