適格年金移行先の選択眼(2) 確定給付企業年金

次に適格年金の移行先の2番目として、確定給付企業年金を取り上げます。
 
(1)確定給付企業年金への移行のポイント
確定給付企業年金(通称DB)は、従来の適格年金の後継制度という位置づけですが、その内容は次の点で適格年金との違いがあります。
 
①年金給付は60歳以降
適格年金の年金給付が「退職給付」であるのに対し、新DBは「老齢給付」となります。その違いは中途退職したケースで現れ、前者は勤続年数等一定条件を満たせば退職したときから年金支給されますが、新DBの場合は、中途退職しても60歳になるまで受給ができません。それまでの期間は、将来の支給に向けて会社が責任をもって運用しなければなりません。
 
②受給資格期間は20年、3年以上には脱退一時金
適格年金の受給資格は定年時のみの支給が認められていましたが、新DBでは勤続年数20年で受給資格を付与することが義務付けられています。また勤続年数20年未満であっても3年以上で退職する場合には脱退一時金を支給しなければなりません。したがって、「定年時のみの支給」だった適年から移行する場合は、退職金制度からの支給との整合性を見直す必要があります。
 
③財政検証ルールが厳しくなる
確定給付企業年金は、適格年金の財政運営をより強化する目的で作られたといっても過言ではありません。具体的には、適格年金のように5年ごとの財政再計算だけでなく、「継続基準」「非継続基準」と呼ばれる財政検証を毎年行い、積立不足の発生で将来支給すべき資産が一定量保たれているかどうかをチェックします。
 
(2)新DBへの移行に際して考えるべきこと
DBは将来の退職金・年金支給のために会社が責任をもって運用する制度ですので、従業員にとっては制度自体に特に支障はありませんが、会社にとっては運用リスクをはじめ様々なリスクを負うこととなります。リスクの種類は次のとおりです。
 
●運用リスク:資産運用において、運用実績が予定利率に到達しない場合には、さらに追加拠出をしなければならないリスクがあります
 
●債務増大リスク:一時金と年金との選択において年金選択率が増える、社員の勤続年数が予定より延びる、計算根拠となる給与が予定を上回って昇給する などは、債務を増大させるリスクとなります。
 
したがって、DBの選択においては、上記のリスクを充分にふまえて導入する必要があります。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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