「現状分析・診断」のイロハ⑧
分析・診断
前回は、「賃金の内部公平性」をチェックする方法を解説しました。今回は、「賃金の外部競争力」をチェックする方法をお話しします。
自社の賃金について、以下のような悩み、もしくは社員の不満の声を聞かれたことはないでしょうか。
1)低賃金を理由とする退職が増えている
2)同業他社と比較して、自社の賃金水準がどうなっているかが気になる
3)同地域企業と比較して、自社の賃金水準がどうなっているかが気になる
一つでも当てはまる場合、「外部競争力」の観点から、自社の賃金水準の実態について分析することを推奨します。
◇外部競争力分析の進め方
年齢・等級・役職・職種といった観点から、外部競争力のある賃金水準であるかを分析します。分析を行う際は、内部公平性の分析でも使用したプロット図に世間水準データを加えることで、実態がどのようになっているかが一目で分かります。なお、世間水準データは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」や、各業界団体の賃金調査から入手することが可能です。
◇外部競争力分析の着眼点
分析を行う際は、次の2点に留意してチェックすることが重要です。
①新卒初任給または30歳前後までの若年層の賃金水準がどうなっているか?
新卒初任給または若年層の賃金水準が世間より低い場合、採用・定着に悪影響を及ぼす恐れがあります。少子高齢化が進行する中で、将来を担う人材の市場価値は益々高まり、若年層の賃金水準引き上げは、人事制度改定の重要な検討事項の一つとなるでしょう。
②優秀者の賃金水準がどうなっているか?
自社の優秀な人材の賃金水準が世間水準より低い場合、離職のリスクが高まります。人材の流動化が進行する中で、優秀な人材をいかに繋ぎ止められるかは、自社の競争力・生産性を高める上で重要な人事課題の一つとなるでしょう。
これらを実現するためには、人事制度の改定を行い、人件費の再配分が必要です。最近、そのようなオーダーも増えてきており、賃金水準についての関心の高まりが伺えます。
今回は、外部競争力の観点から賃金水準の問題点を導き出す方法を解説しました。次回は、「人員構成」の分析手法についてお話しします。
執筆者
岸本 耕平
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)
「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。