評価コメントの質を高めるために

人事評価制度を運用する中で、評価者から多く聞かれる悩みの一つが「評価コメントの書き方」です。評価の点数付けについては制度上のルールが定められている一方で、コメント欄になると何を書けばよいのか分からず、結果として抽象的な表現に留まってしまっているケースは少なくありません。特に、評価シートの記入が繁忙期と重なりやすいことや、表現の仕方によっては誤解やトラブルにつながるのではないかという懸念から、無難な表現を選びがちになることも一因と言えます。

 

評価コメントを被評価者のモチベーション喚起のためと位置付けるのであれば、一定程度抽象的な表現であっても大きな問題はないかもしれません。しかし、被評価者の評価に対する納得感の向上や、次の成長につなげていくためのフィードバックとして位置付けるのであれば、評価コメントにはもう一工夫の余地があると言えます。

 

本稿では、被評価者の評価に対する納得感の向上や成長につなげていくための評価コメントの整理方法をご紹介します。

 

評価コメントに盛り込みたい2つの観点

評価コメントを納得感や成長につなげていくためには、「何を伝えるためのコメントなのか」を評価者自身が明確にしておくことが重要です。具体的には、次の2つの観点が挙げられます。

 

①【評価した点】評価判断の前提となった評価根拠が示されていること

どのような貢献や成果が評価につながったのかを具体的に示すことで、評価結果の背景が被評価者に伝わりやすくなります。例えば「全体としてよく頑張っていた」「期待通りの成果だった」といった表現だけでは、どの点が評価されたのかが分かりにくく、評価結果への納得感は高まりにくくなります。一方で、評価につながった貢献や成果を挙げることで、被評価者は自身の強みや再現すべき行動を理解しやすくなります。

 

②【期待したい点】次に向けて期待される具体的行動が示されていること

次の期にどのような貢献や成果を期待しているのかを示すことで、評価コメントが単なる結果の振り返りに留まらず、次の行動につながるフィードバックとなります。「今後の成長を期待します」「引き続き頑張ってください」といった表現も前向きではありますが、何を意識すればよいのかが伝わりにくい場合があります。評価判断に関わったポイントに紐づけて、期待する行動の方向性を示すことが重要です。

 

なお、すべてを網羅的に書くことは現実的ではありません。評価判断に特に影響したポイントを2~3点に絞って整理することで、コメントの分量を抑えつつも、伝えたい内容を明確にすることができます。

 

これらの観点を踏まえた評価コメントの一例は次の通りです。

 

【評価コメントの一例】

担当業務については、期初に設定した目標を概ね達成しました。特に◯月の案件では、関係部署との調整を主体的に行い、期限内に業務を完了させた点を評価しています。一方で、進捗共有が遅れる場面も見られたため、今後は定例ミーティングやメール等を活用し、早めに情報共有することを期待しています。

 

評価コメントを見直すことの副次的効果

前述の観点を踏まえて評価コメントを書くことは、被評価者だけでなく、評価者自身にとっても意味があります。評価者は、どのような貢献や行動を重視して評価しているのかを言語化する過程で、自身の評価視点や判断軸を改めて整理することになります。また、期中の1on1や日常のやり取りを振り返りながらコメントを考えることで、評価と日常のマネジメントが分断されにくくなる効果も期待できます。

 

さらに、評価者研修や振り返りの場などで他の評価者のコメントを共有・参照する機会を設けることができれば、表現の傾向や評価の捉え方の違いに気づくきっかけにもなります。こうした積み重ねによって評価コメントの内容が一定程度そろってくると、評価のばらつきも生じにくくなり、結果として評価の公平性や制度全体の納得感を下支えすることにつながります。

 

 

評価コメントは評価結果そのものを左右するものではありませんが、点数だけでは伝えきれない評価判断の背景や、次に向けた助言を補足する重要な役割を担っています。副次的効果も踏まえつつ、自社の評価制度における評価コメントの書き方を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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