評価の加減点で不公平感につながる?適正な運用に向けたポイント

人事評価表において、評価項目とは別に評価者が裁量で加減点する仕組みは、柔軟な評価を可能とするメリットがあります。一方で加減点を評価者の裁量のままに運用すると、不公平感や不信感につながるリスクもあります。そのリスク回避に向けて、加減点も一定の基準とルールを設けることが重要です。

 

1.加減点のメリットとリスク

評価表をどれだけ精緻に設計しても、「評価項目で拾いきれないが、組織や上司として評価したくなる要素」が出てきます。このような要素を評価に反映させるため、設定された項目以外に、評価者の裁量によって加点・減点を行える仕組みを設けることが有効です。

 

加点の対象に関する例としては、期初には想定していなかった臨時の大規模プロジェクトの成果を評価したいというものです。このような貢献について、期初に目標を立てていなければ目標管理による評価はしにくく、適切な評価項目もない場合、項目外の加点により評価に反映できます。また懲戒にするほどではないものの、改善を促す必要がある行為について、個別の内容を評価項目で網羅するのはあまり現実的ではなく、評価外の減点により反映する方が運用しやすいでしょう。

 

一方でこの加減点評価について、評価者の裁量だけで運用してしまうことのリスクもあります。加減点の判断基準が評価者によって大きく異なるようであれば、社員の不公平感を招きます。また加減点を大きくするあまり、本来の項目による評価が大きく覆ってしまえば、制度そのものへの信頼を損ねる恐れがあります。

 

 

2.リスク回避に向けた具体策

そこで、加減点評価を評価者の裁量に完全に任せるのではなく、一定の基準とルールを設けておくことが肝要です。特に①基準の定義と具体化、②運用の強化、③上限の設定の3点が重要です。

 

まず制度として何を加減点の対象とするのか、基準の定義が必要です。例えば以下のようなものがわかりやすいでしょう。
 

・「設定目標や評価項目で評価できないが、成果や業績あるいは組織の信頼にプラスあるいはマイナスの影響を及ぼした行動」

・「企業理念や行動指針に合致した行動」

 
2つ目の例のように、着眼点として企業理念や行動指針等を含めることがおすすめです。企業として重要な価値観の浸透につながるだけでなく、成果や業績に直接結び付きにくいバックオフィス系の社員や経験の浅い社員も加点の対象とすることができるためです。

 

定義を決めたら、それに沿って具体例を整理します。過去の加減点の事例を収集したうえで、「よい例」「悪い例」としてとりまとめ、定義との関係を含めたガイドラインを作成し評価者に共有することで、基準の浸透が促されます(図1)。

 

 

図1 加減点評価のガイドラインのイメージ

悪い例

よい例

■   謙虚な姿勢で就労し、学ぶことが多い

■   身だしなみがよく、業者対応も丁寧である

■   前職での経験があり、取引の習慣等に精通している

■   禁煙に成功した

⇒ 上記4つはいずれも成果業績への明確な影響が確認できません。成果業績にプラスの影響があったもののみ対象としてください

 

■   後輩指導を丁寧に行っている

■   毎日の努力により売上目標を超過達成した

⇒ 上記2つはいずれも通常の評価項目で評価できます。そのような内容は加減点の対象としないでください

■   期初に想定されていなかったシステムの更新PJをリーダーとして牽引し、期限通りに終わらせた

⇒ 成果にプラスの影響 

 

■   業務の納期遅れが続いたことにより、他のメンバーの負担増加を招き、間接的に業務品質の低下を及ぼした

⇒ 成果にマイナスの影響

 

■   本人の報連相の遅れによりA社からのクレームにつながった

⇒ 会社の信頼にマイナスの影響

 

■   コピー用紙の補充や清掃など、誰に言われずとも率先してやっており、全体の模範となった

⇒ 行動指針の「奉仕」に合致した行動

 

 

とはいえ、すべてのケースを事前に想定することは難しく、最終的には評価者の判断となります。そこで加減点もそれ以外の評価と同様、一次評価の結果を二次評価者や人事部がチェックし、不適切なものがあれば差し戻すといった体制とするとよいでしょう。また評価者研修の中で、判断に迷いやすい事例を取り上げる、加減点評価で陥りやすい評価エラーを解説することも有効です。

 

最後に、加点・減点に上限を設けることも必要です。たとえば「総得点の±5%以内」といったものが考えらえるでしょうか。あるいは最終的に賞与など処遇に反映させる程度ということでれば「評価ランクの上下1段階まで」といったルールになるでしょう。

 

 

加減点評価は、評価基準外の内容について評価することにより、より実態に即した柔軟な評価が実現できる仕組みです。一方で、あるいはだからこそ加減点にも一定の基準とルールを設けて浸透させないことにはリスクにつながってしまいます。効果的な運用に向けて、参考にされてみてください。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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