世間水準データ活用における留意点

人件費や賃金水準といった世間水準データは、意思決定を行うための重要な判断材料の1つです。しかし、このようなデータとの向き合い方を間違えてしまうと、誤った意思決定をしてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
上記を踏まえ、今回は世間水準データを活用する際の留意点を解説したいと思います。
 
■調査の対象となった企業属性(規模・業種・地域等)を確認する
世間水準データについて調査を行う企業・団体は数多くあり、調査結果もそれぞれ異なります。したがって、データを活用する際は、どの調査を活用するのが妥当であるか取捨選択する必要があります。取捨選択にあたっては、調査の対象となった企業の属性(規模・業種・地域など)を確認し、データの活用目的に合致した調査を選択するとよいでしょう
 
■平均値に惑われず、世間の実態を正しく把握する
プレスリリースなどで公表される調査結果は、平均値だけにとどまることがほとんどです。この平均値は曲者で世間の実態を正しく反映されているとは限りません。例えば、調査の母集団が少なすぎると極端な結果が出てしまうこともあります。また、データの分布状況次第では平均値が中央値より高く(低く)なることもあります。したがって、平均値だけで判断するのではなく、調査結果の詳細にも目を通し、世間の実態を正しく掴めているか思慮深く判断することを心がけてください。場合によっては、複数の調査結果をもとに、多面的に考察するのもよいでしょう。
 
■世間のトレンドを掴む
世間水準データを見る際は、「今年はどうだった」という視点だけでなく、「去年と比べてどうか」という視点を持ち、世間のトレンドを掴むことも重要です。世間のトレンドを掴むことで、採用・定着といった問題にいち早く対処できることもあります。調査資料を毎年ウォッチし、世間動向を踏まえた課題抽出を行うことを人事部の定例業務と加えておくのも効果的です。
 
本日は、世間水準データとの向き合い方についてお話してきました。一昔前と比べると、こういったデータは入手しやすくなりました。それと同時に、情報を活かしきれるかが企業にとって重要な課題です。本日お伝えした内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

執筆者

岸本 耕平 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー