“仕事主義”人事制度が求められる背景

今回のブログでも、引き続き”仕事主義”人事制度について解説していきたいと思います。「仕事主義」人事制度の基本的な考え方等については、前回までのブログをご参考ください。
 
“仕事主義”人事制度、すなわち「職務主義」人事制度や「役割主義」人事制度は、既に日本企業においても大手・中堅企業を中心に導入されていますが、能力主義人事制度と比べるとその導入割合はまだまだといった状況です。しかしながら、今後に向けては、業種や規模を問わず、より多くの日本企業で導入が進んでいくものと推察されます。そのような見通しの背景として、現在及び将来の日本企業を取り巻く「4つの組織的課題」が挙げられます。具体的には以下の通りです。
 
【1.同一労働同一賃金への対応】
働き方改革の一環として、現在の政府によって実現に向けた取り組みが推進されている労働テーマ。同一労働同一賃金の考え方を反映した法整備が進んだ場合、非正規社員の処遇制度・水準が、正社員との間で「仕事(内容・責任)」を軸に合理的に整備されていることが求められる
 
【2.労働生産性の向上】
当該テーマも、働き方改革の目的・成果として、政府が積極的に取り組みを推進しており、企業においても既に具体的な改革が始まっている。日本企業や日本人の労働生産性が低い理由には様々な要因があるものの、その一つに、社員一人ひとりの「仕事が曖昧である」という点が挙げられる。
 
【3.採用競争力の強化】
生産年齢人口の減少という構造的要因によって、企業における”人手不足”は年々厳しさを増している。このような状況下で、旧来型の年功処遇制度を維持したままでは、優秀な若手人材の獲得・定着は困難であり、年齢に関係なく「任せる仕事の現在価値」で処遇をすることが必要である。
 
【4.専門性に長けた社員の獲得・育成】
成熟した経済環境の中で、他社よりも優れたビジネスモデルや製品・サービスを開発・展開していくためには、管理者としてのゼネラリストだけでなく、専門性に長けた人材がより一層求められることになる。上記のような人材を計画的に獲得・育成する上でも、「任せる仕事の現在価値」で処遇をすることが理想的である。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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