管理者向け「労務管理研修」の勧め

残業問題を筆頭に企業の労務トラブルが後を絶えません。最近ではクライアント先でも、労務管理面の強化を課題として挙げられるところが増えてきました。この点、労務管理が企業存続にとって大変重要なテーマであるにも係らず、最前線の管理職の意識が低いのが実状です。現場の管理職をいかに上手く巻き込み、リスク管理を行っていくかを十分に検討しなければなりません。
 
こうした現状を鑑み、最近では「労務管理」面に特化して半日程度の社内研修をご提案する機会を増やしています。「残業管理手法」「メンタルヘルス・マネジメント」「ハラスメントのリスク」といった内容で、管理者として最低限知っておくべき法律知識、部下指導ノウハウを学んでいただき、またグループワークを通じて管理者同士の意識統一を図ることを目的としています。
  
多くの企業の管理者がプレイングマネージャーということもあり、労務のマネジメントまで手が回っていないのが実状です。あるいは「それは人事部の仕事でしょう」という程度の意識である場合がほとんどです。しかしながら、現場で責任をもつ管理者である以上、労務管理のリスクを正確に認識し、またノウハウを身につけておくことは管理者としての役割・責務に他なりません。
  
さて、研修内容は企業ごとの課題によりけりですが、やはりニーズが高いのは「残業管理」に関する内容です。未払い残業を防止すること、また生産性の面でも恒常的な残業を解決したい企業は多いようです。この点、残業管理面に特化したカリキュラムを組むのであれば、例えば次のような内容が適していると考えられます。
  
①オリエンテーション:社長・経営陣挨拶、研修の目的説明
②講義A:管理者の役割としての労務管理の重要性、企業リスクを理解する
③講義B:労働基準法の正しい理解、社内の残業管理ルールの再確認・徹底
④演習A:部下の残業傾向の確認と指導方針の検討
⑤演習B:自部署の残業削減を進めるために必要な取組み施策の検討
⑥まとめ
  
残業を減らせと押し付けるだけでは管理職の意識としてどうしても消極的になり、納得感が得られにくいため、研修を通じて管理者自身に気付きを与える機会を多くつくることを主眼に置きます。その中では、単にコスト面の話をするだけでなく、企業としてのリスク、生産性を上げていくことの必要性まで含め、複合的、多面的に理解を促すようにします。また、研修ではグループワークを多く取り入れることを基本にします。
  
「労務管理」のテーマについて管理者同士でディスカッションする機会は案外少ないようですが、他部署の労務管理のやり方などを参考にしながら課題整理をすることは非常に重要と考えます。法律のレクチャーが絡む部分では、人事部門内に社会保険労務士など有資格者があれば自前でしていただいて問題ありませんが、場合によっては外部の専門家活用も検討してみてください。ある程度研修内容が内製化できれば、今後は初任管理者研修のプログラムとして必ず取り入れるようにすることをお勧めします。

執筆者

森中 謙介 
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。業種・業態ごとの実態に沿った制度設計はもちろんのこと、人材育成との効果的な連動、社員の高齢化への対応など、経営課題のトレンドに沿った最適な人事制度を日々提案し、実績を重ねている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー