賃金設計講座(2) 諸手当の設計について②

前回のブログでは、日本企業の賃金制度における諸手当の位置付けや意味合いについて述べた。今回のブログでは、諸手当の分類について解説していくこととする。
 
諸手当の分類
諸手当と一口に言っても、日本企業で導入されている諸手当の項目には様々な種類がある。代表的な手当としては、「役職手当」や「家族手当」「住宅手当」などになるが、それ以外にも色々な種類が存在しているという事実は、日本企業の賃金制度における諸手当の重要性を表していることに他ならない。
 
しかしながら、項目としての種類は様々であっても、賃金としての性質や支給目的の観点から見れば、幾つかのグループに分類することが可能である。そして、諸手当の導入や見直しを考えるにあたっては、まずはこの大きなグループレベルで諸手当の必要性や位置付けなどを考えることが必要である。
 
そこで、以下では、諸手当を分類する6つのグループをご紹介する。(※なお以下の分類方法は筆者の見解であり、必ずしも一般的なものではない点にご留意ください。)
 
【1】生活補助的な手当
社員各人の生活状況に応じて、家計を補助する目的で支給されている手当である。代表的なものは「家族手当」と「住宅手当」であり、これらは属人的な要因によって支給の有無や支給額が決定されるため、「属人的手当」と呼ばれることもある。 なお、上記以外には、「地域手当」や「別居手当」も当該グループに分類することができる。
 
【2】職務価値としての手当
仕事の職務価値(難易度や責任度など)に応じて支給される手当である。代表的なものは「役職手当」である。基本給自体が職務給である場合には役職手当を付与する必要性はないが、そのような日本企業は少ないため、結果として役職手当はほとんどの日本企業で採用されている採用率の高い手当となっている。
 
【3】勤務条件に基づく手当
勤務条件の厳しさや勤務の特殊性などに応じて支給される手当である。代表的なものとしては、「年末年始出勤手当」、「交替手当」、「特殊作業手当」などである。これ以外にも、海外駐在員に対して心身面での負担を勘案して支給される「ハードシップ手当」は、当該グループの手当とみなすことができる。
 
【4】福利厚生的な手当
名称の通り、社員に対する福利厚生面の充実を目的とした手当である。代表的なものとしては、「食事手当」や「寒冷地手当」などである。支給目的の観点からいけば、【1】の生活補助的な手当に包括してしまうことも可能であるが、家族手当や住宅手当と比べると企業における採用率が圧倒的に低いため、ここでは敢えて分離している。
 
【5】実費弁償的な手当
賃金ではあるものの、一方で職務活動に必要な費用を補助する意味合いを持っている手当である。代表的なものとしては「通勤手当」になる。これ以外にも(携帯電話の使用有無や使用割合に関係なく)支給額が一律的である「携帯手当」などは賃金としてみなされる可能性が高いため、その場合には実費弁償的な手当ということになるだろう。
 
【6】法定手当 労働法に基づく手当であり、具体的には残業手当としての「時間外手当」、「休日手当」、「深夜手当」がこれに該当する。法律基準や要件を満たすことが必須の手当である。
 
以上、諸手当を6つのグループに分類してみたが、賃金制度の見直しにあたっては、まずは自社で採用している諸手当を分類化してみた上で、どのグループの手当が多くなっているかを分析してみるべきである。そうすることで、諸手当に関する自社の問題や課題が見えてくるはずである。
 
次回(以降)のブログでは、諸手当を「支給要件」と「支給水準」という2つの側面から解説をしていきたいと思う。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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