賃金設計講座(2) 諸手当の設計について①

前回までのブログでは、計4回にわたって基本給の設計方法について解説してきた。 今回からは、月例給与のもう一つの柱である「諸手当」について、その位置付けや設計時のポイント、留意点等について述べていくこととする
 
■ 諸手当は「日本的な賃金」
多くの日本企業では、基本給と併せて何らかの諸手当を支給している。これら諸手当の金額は決して低くはなく、給与構成において一定の存在感を持っている場合が多い。
一方アメリカなどでは、月例給与の内訳を基本給と諸手当に区分して支給しているケースは少ないらしい。これは、「賃金=職務対価」という概念が明確になっており、いわゆる職務給としての意味合いで給与を支給しているからだと思われる。賃金を決めるにあたって、家族も住宅も関係ないのである。
 
日本企業の場合は、「賃金=職務対価」という考え方が(欧米と比べると)非常に希薄である。故に、賃金の決定に際して、「職務価値」以外の様々な要素が入り込む余地があったのだと思われる。年齢しかり、家族しかり、住宅しかり・・・である。
 
賃金(人件費)の原資が企業活動の結果である付加価値によって生み出されるものである・・・と定義するのであれば、企業活動を構成する「職務」を基準として賃金は決めるべきなのかもしれない。
 
しかしながら、別の捉え方もできる。労働者に賃金を支給することで、企業は付加価値を生み出しているという考え方である。そう考えると、職務価値云々よりも、まずは労働者のインセンティブを高めるような賃金の決定方法について考えるべきなのかもしれない。
「卵が先か、鶏が先か」の議論になってしまうが、日本企業の場合は、まずは社員のモチベーションに焦点を当てるが故に、職務価値以外の賃金決定要素が重視されるようになったのではないだろうか。。。
 
いずれにしても、諸手当という賃金形態は、単に「日本独自の賃金」というだけではなく、日本的な意識から生まれた「極めて日本的な賃金」であると筆者は考える。
 
諸手当は、これからも日本企業の賃金システムの中では無視できない仕組みであり続けると思われる。近年では、成果主義の流れの中で、諸手当の中でも特に日本的な「家族手当」や「住宅手当」が廃止される方向に進んできたが、それでも依然としてこれらの手当を採用している企業は半数を超えているようである。
 
この日本的な賃金である「諸手当」を、今後の日本企業はどのように活用していくべきなのだろうか?
 
次回(以降)のブログでは、上記の問いを一つのテーマとして、もう少し具体的で実務的な解説をしていきたいと思う。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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