人的資本を「社内開示」する意義
分析・診断
2023年3月期から、上場企業は有価証券報告書で人的資本に関する情報を開示することが義務化されました。また、2023年4月の育児介護休業法の改正にて従業員数1000名以上の企業では育児休業の取得状況の開示が求められています。
このように、人的資本開示を求める流れは加速している状況ですが、現時点では、社外に対する開示に絞ったものばかりです。ただ、人的資本開示に関する国際規格であるISO30414では、開示対象を「社内外のステークホルダー」と位置付けられています。(開示指標による)そこで今回のブログでは、人的資本に関する情報を「社内」へ開示する意義を深堀して考えていきたいと思います。
○社内開示の対象と開示の意義
社内開示する対象は、①社員②経営者・人事部門の2つに区別できるでしょう。
対象ごとに開示を行う意義を整理すると、以下の通りです。
<社員>
・自社の人的資本経営の状況を把握できる
・経年の改善度や他社比較を通じて、自社が人的資本経営に対する注力度を実感できる。
・その結果、自社に対するロイヤリティを高めるきっかけとなる。
<経営者・人事部門>
・人的資本経営に関する目標・KPIとなる。
・KPI設定が可能になることで、取り組みの評価が可能に。計画的な課題解決につながる。
ここまで社内開示を行う意義を整理しました。社外だけでなく、社内開示も一定の効果が得られるでしょう。中小企業にとっては社外より社内開示から得られる効用の方が大きそうです。
さて、実際の運用では、「何を開示するか?」が課題になるでしょう。この点については、次回以降のブログで事例等をご紹介できればと考えています。
執筆者
岸本 耕平
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)
「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。