「賞与の月給化」を行わないほうがよい会社の特徴とは

「賞与の月給化」に関する相談を受ける機会が増えてきています。「賞与制度廃止、月給1本化」はまだ早いでしょうが、賞与の一定割合を月給に振り分ける、という企業の動きは今後も確実に増加するでしょう。

企業に対する「月給ベース」での賃上げ圧力は世の中全体で引き続き強いですが、定昇・ベースアップを高い水準で実施し続けることは多くの企業にとって簡単ではなく、中小企業においては猶更です。この点、ある程度安定的に賞与支給ができている会社であれば「賞与の月給化」を通じて、短期的ではありますがトータルの人件費上昇を抑えつつ月給ベースでの賃上げを効果的に実現できる可能性があります。ただ、安易に実施すべきでないと考えられる企業も存在します。「賞与の月給化」で失敗しやすい企業の特徴について、幾つか見ておきたいと思います。

 

1.賞与額の変動が大きい会社

当たり前の話ですが、「賞与の月給化」は会社全体としては「変動費の固定費化」に繋がりますので、単純に会社業績にとってリスク要因となります。そのため、年単位での賞与額の変動が比較的大きい会社には賞与の月給化は適さない面があります。例えば直近数年程度は高い賞与水準が出せているとしても、その時点の賞与(があること)をベースとして一部を月給化することにした場合、会社業績が低調路線に転じた場合、固定費の上昇による影響を大きく受けることになってしまいます。本来こうした会社では賞与を月給化することに対して慎重になるべきということは想像できるところではありますが、短期的に月給の引き上げが人材の確保・定着にどうしても必要であるとすると、

 

「まだ賞与が出せるタイミングで(業績を見越して)月給の引き上げをしておこう」

 

「月給の安定化と人材の安定化を図ることが先決であり、そうすることで更に業績と

生産性を上げ、結果として賞与についても安定して支給できる状態にしていこう」

 

という風に、やや短絡的に実行してしまう可能性もあり、実際にコンサルタントとしてそうした事例を見聞きする機会もありました。今後も本当に出せるかどうか分からない賞与を見越して先に月給化しておく、というのはやや「賭け」に似たような要素もありますし、本来の意味での「賞与の月給化」と言えるのか、怪しいところもあります。くれぐれも慎重な判断が求められるケースと言えるでしょう。

 

2.賞与の月給化により、賞与支給率が世間相場より大幅に下がる会社

長年にわたって賞与額が安定している会社もあります。毎年大幅な上下が無く、概ね固定的に賞与が支給されてきているケースでは、比較的「賞与の月給化」ということを実践しやすいと言えるでしょう。

しかしながら、賞与の月給化によってこれまで支給されていた賞与ベースが大きく引き下がることになり、結果として「賞与水準」から見た企業競争力を失ってしまうのであれば、注意が必要です。例えば中小企業の場合で、「年間賞与5.0ヵ月」の企業が賞与の月給化により「年間4.0ヵ月」にベースを変更したとしても、まだ世間相場と比べても十分な賞与月数が確保されていると言えますが、「年間賞与3.0ヵ月」の会社が賞与の月給化により「年間1.5ヵ月」に変更したとしたらどうでしょうか。やや極端な例ではありますが、今後は「年間1.5ヵ月」が賞与ベースになるとした場合、半年分では単純計算で1.0ヵ月をきってしまいますから、単に賞与水準が低い会社という風に社員の目に映ってしまうことは想像に難くないですし、場合によっては今後の採用にも悪影響が出ることが懸念されます。「その分月給が上がっているからいいじゃないか」と思いたいところではありますが、社員目線ということを考えた場合、月給が上がったタイミングだけは良いのですが、すぐにそれが当たり前の感覚になってしまう(とびぬけて他社より月給が高い場合は別ですが)というのが人間心理でしょうし、結果的に残るのは「賞与が他社より低い」というマイナス面だけが印象付けられる危険性もあります。そこから賞与を更に引き上げていければいいのですが、そう簡単な話でもありません。賞与の月給化を行うにあたり、どの程度のバランスで実施していくのか、こちらも慎重な判断が求められます。

 

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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