適格年金、いよいよ最終局面へ

税制適格退職年金(以下、適格年金)がいよいよ最終局面を迎えています。適格年金は2001年に施行された確定給付企業年金法によって、2012年3月末までに他制度への移行あるいは廃止をしなければならないことが定められてきました。筆者も適年移行に関しては、多くの企業でコンサルティングを担当させていただきました。「あと2012年まであと○年」と言っていた頃は、まだまだ先と思っていたのですが、今年の3月でついにタイムリミットが訪れるかと思うと、感慨深いものがあります。
 
適格年金の廃止とそれに伴う確定給付・確定拠出の両企業年金制度の新設、同時に行われた退職給付会計基準の導入は、企業の退職金・年金制度のあり方を大きく変えてきました。この10年間を振り返って、適年移行がもたらした成果を列挙してみたいと思います。
 
1.経営課題としての「退職金・企業年金問題」への注目度・関心が高まった
それまでの年功序列・終身雇用の日本的経営の中で、退職金・年金制度はガッチリと守られてきました。そのあり方に異を唱えたり、問題提起したりする風潮すらなかったように思います。ところが、バブル崩壊後の日本経済の行きづまりにより人件費抑制へのプレッシャーが激しくなると、その矛先は給与・賞与だけでなく退職金や企業年金にも向かうようになりました。その結末が、企業年金ビッグバンとなって表れたのです。
 
2.生涯設計としての「年金、老後生活保障」への関心が高まった
 退職金・企業年金が安泰ではなくなる、イコール、従業員の老後の生活が脅かされることに直結します。従業員の方でも将来を安閑としてはいられず、どのように老後を過ごすべきかの関心が高まってきました。ただこれは、適年や企業年金の問題というより、公的年金に端を発した形で現れた要素が強いともいえます。
 
3.企業価値の基準としての退職給付に対する見方が変わった
これは適年移行ではなく、退職給付会計基準による影響といえますが、それまでオフバランス(簿外債務)として社外に情報開示する必要がなかった退職給付債務について、オンバランスが迫られたことは、特に大手上場企業にとってはとてつもない改定となりました。これにより、企業は退職金・企業年金制度を通じて、過去だけでなく将来も数値に置き換えて物事を判断しなければならなくなったといえます。
 
さて、厚労省のホームページには昨年9月末時点での適年契約数が載っており、3424件があと半年での移行をしなければならない企業数です。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/tekikaku_e.html
 
皆様の企業もその中の1つとすれば、どうぞ最後の最後まで気を抜かず、しっかりと対応いただきたいと思います。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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