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賃金設計講座(1)  基本給の設計について②

2010年07月30日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、基本給の設計方法のうち、まず初めに設定すべき「基本給の決定要素と構成」に関して述べた。今回のブログでは、次のステップとして「隣り合う賃金レンジの関係性」について解説していくこととする。

② 隣り合う賃金レンジの関係性

賃金レンジとは、その名の通り「基本給等の給与の幅のこと」を指す。換言すると、「給与の上限額と下限額の金額差」と言い表すこともできる。基本給等を「シングルレート(単一給)」で設定しない限りは、当然にこの「賃金レンジ(給与幅)」が発生することになる。
一般的には、等級(もしくは役職)ごとに基本給を設計するため、それぞれの等級毎にこの『賃金レンジ』を設計することになる。この際、水準の設定と合わせて大きな検討ポイントになるのが、今回のテーマである「隣り合う賃金レンジの関係性」である。具体的に言うと、例えば、1等級と2等級の賃金レンジ同士が「重なるのか否か」ということである。

この隣り合う賃金レンジ同士の"重なり具合い"をどのように設定するかによって、実は基本給の性質が大きく変わってくることになる。通常、賃金レンジの重複が大きい場合には、"より年功的な給与"としての性質を持つことになる。一方で、賃金レンジの重複がなく、かつ、非重複部分の開きが大きい場合には、"より実力主義的な給与"の性質を持つことになる。
なお、隣り合う賃金レンジの関係性については、一般的に以下の3つのタイプに区分することができる。それぞれにメリット/デメリットがあるため、どのタイプを採用するかは自社の報酬ポリシーに基づいて決定することになる。

(1)重複型・・・・・・・賃金レンジ同士が重複している。

   <メリット>滞留者に対する昇給インセンティブを確保できる
   <デメリット>年功的な運用に陥りやすい

(2)接合型・・・・・・・賃金レンジ同士は重複していない。なお、一方の上限額と他方の下限額が接合している(=非重複部分に乖離幅がない)。

   <メリット>年功的な運用を防止しやすい
   <デメリット>滞留者に対する昇給インセンティブを確保しにくい

(3)階差型・・・・・・・賃金レンジ同士が全く重複しておらず、かつ非重複部分に一定の乖離幅がある。

   <メリット>昇格インセンティブを確保できる、実力と給与の間にミスマッチが生じにくい
   <デメリット>滞留者に対する昇給インセンティブを確保できない、非合理的な昇格圧力を高めるおそれがある

かつての年功的賃金制度の下では「重複型」のタイプが主流となっていたが、近年では実力主義への移行に伴い「階差型」のタイプもかなり増えてきている。特に、職務給のような"仕事ベース"の基本給の場合には、階差型のタイプを採用し、各等級の賃金レンジはあまり広く設定しないケースが多いと思われる。

次回(以降)のブログでは、基本給設計時における「③基本給の設定水準」について解説したいと思う。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。