部下へのフィードバックが圧倒的にしやすくなる「SBIモデル」

評価者研修等の場で管理職の方と話していると、「部下への指導が難しい」という悩みを聞くことがあります。特に、改善を促したい場面で「相手が素直に受け取ってくれるか不安だ」「伝え方が感覚的、あるいは感情的になってしまう」といった声が多く聞かれます。

このような悩みに対しては、SBIモデルというフレームワークが非常に役に立ちます。本記事ではSBIモデルの基本と発展形、および実際の活用に向けたポイントを紹介します。

 

SBIモデルとは何か?

SBIとは、次の3つの英単語の頭文字を取ったものです。
 
・Situation(状況)

・Behavior(行動)

・Impact(影響)
 
SBIモデルとはこの3つの要素のみを、この順序で本人にフィードバックするというものです。それによって指摘事項を相手が納得しやすく、また感覚や感情に陥ることなく伝えることができます。
 
例えば、部下に対して「最近、主体性が足りないな」と感じることもあるでしょう。しかし感じたことをそのままフィードバックしたのでは、何のことを指摘しているのかが伝わらず、また何を改善すればよいのかわからない、あるいはそもそも自身が本当に主体性が足りていないのか納得できません。
 
一方、SBIモデルを用いると次のようになります。
 

・Situation(状況):「先ほどの営業プレゼンにおいて」

・Behavior(行動):「あなたは一通りの資料の説明をするのみで、先方の質問にはほぼ答えず、私がかわりに対応していました」

・Impact(影響):「案件の責任者であるあなたが主体で対応しないと、先方のニーズを把握できないどころか、先方の信頼を失ってしまうかもしれません」

 
このように、いつ・どのような場面での、どのような行動のことを指摘しているのかを具体的に示し、そしてなぜそれが悪かったのか(あるいは良かったのか)をフィードバックすることで、相手が納得感を持って理解しやすくなります。さらには事実にのみフォーカスすることにより、感情的な表現や人格的な攻撃に陥ることを避け、相手との関係性を維持することにも寄与します。

 

SBIモデルの発展形

以上がSBIモデルの基本です。他にも発展形として、行動変容を促すSBI+Next、あるいは対話につなげるSBIIといったフレームワークもあります。

まずSBI + Nextは、SBIの後に「Next(次の行動)」を加えたものです。例えば先の例では以下のようになります。
 

・Situation:「先ほどの営業プレゼンにおいて」

・Behavior:「あなたは一通りの資料の説明をするのみで、先方の質問にはほぼ答えず、私がかわりに対応していました」

・Impact: 「案件の責任者であるあなたが主体で対応しないと、先方のニーズを把握できないどころか、先方の信頼を失ってしまうかもしれません」

・Next:  「次回のプレゼンでは、例えば質問を想定して回答を準備し、またその内容について事前に私に相談してみてはいかがでしょうか」

 
このSBI + Nextは、経験が浅いがために有効な取り組みを考え切れない、あるいは迅速な対応が重要な場合に有効です。
 
もう一つの発展形がSBII(SBI+Intent)、つまりSBIにくわえてその行動の背景にある意図を聞いてみる、というものです。同様に先の例では以下のようになります。
 

・Situation:「先ほどの営業プレゼンにおいて」

・Behavior:「あなたは一通りの資料の説明をするのみで、先方の質問にはほぼ答えず、私がかわりに対応していました」

・Impact: 「案件の責任者であるあなたが主体で対応しないと、先方のニーズを把握できないどころか、先方の信頼を失ってしまうかもしれません」

・Intent: 「何か考えていたことや、発言を控えた理由はありましたか?」

 
このSBIIでは一方的な指摘や指示ではなく、対話を通じて相手の気づきを促すことで、より納得感の高いフィードバックができます。

また実務の場においては、SBIIで背景を確認しつつ、Nextで行動を促すというように両者を併用するという使い方も効果的です。

 

SBIモデルを活用する際のポイント

SBIモデルを効果的に活用するためには、運用面で意識しておきたいポイントがあります。まず重要なのは、指摘したい出来事からなるべく時間を空けずにフィードバックすることです。時間が経過することによって具体的な状況を思い出しにくくなり、本人の実感が得にくくなる、あるいは話が食い違うなどのリスクがあります。例えば会議や商談などについて伝えるのであれば、その直後に伝えるのが理想であり、遅くともその日のうちに伝えるべきです。
 
もう一つ大切なのは、フィードバックを行うことを事前に伝えるということです。特に信頼関係がまだ十分に築かれていない場合、唐突にネガティブな指摘することによって相手がショックを受けることもあります。「今から少しフィードバックをしてもいいですか」「今日の会議について感じたことを伝えてもいいですか」といった一言を添えることで、相手が心理的に準備をすることができ、建設的なフィードバックにつながります。
 
最後に、初めて実施するなど不慣れな場合は、フィードバックの練習をする機会を持つことも有効です。例えば、同じ管理職同士でSBIモデルを使ったフィードバックに関するロールプレイを行い、相手役や第三者からコメントを受けることによって、自身の傾向や改善点に気づくことができます。筆者も評価者研修でこのようなロールプレイングをすることがあり、「Impactはもっと言い切ってもいいのでは」「もう少し相手がショックを受けすぎないよう、表現を選んだほうがいいのでは」等といったコメントが聞かれます。

 

SBIモデルは非常にシンプルなフレームワークですが、活用することによってフィードバックの質を大きく高めることができます。明日から実践できる手法として、ぜひ日常のマネジメントに取り入れてみてください。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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