部下とのコミュニケーションを見直す
教育・能力開発
部下に言ったことが伝わっていない、伝えたが行動に表れない、といった現象、上司の方であればご経験がおありかと思います。
「コミュニケーション」という普段は無意識で行っている行動でも、なかなか思い通りにはいかないものです。こちらは伝えたつもりでも、相手がちゃんと受け取っていない、ということがかなりの頻度で起こってしまいます。
この現象が起こる原因は、関係性、業務環境、部下の能力レベルなど、様々な面が考えられますが、コミュニケーションという側面においては次のようなことが要因となっています。
①相手の受け入れ態勢が整っていない
②指示内容が理解できていない
③指示内容が正しく伝わっていない
①相手の受け入れ態勢が整っていない
これは部下の意識がちゃんと上司の言葉に向いていないことによって起こります。例えば1)突然言われたために、話に集中する切り替えができていない 2)叱責を兼ねている場合に部下の頭の中が言い訳や説明することに意識が向いている場合、などが考えられます。
これを防ぐには、相手の様子を観察して、理解度に不安があれば確認する作業が必要になります。また重要な指示については、デスク回りや立ち話で「ついで」に指示するのではなく、1)今から何を話そうとしているのかを先に伝える 2)会議室などで互いに椅子に座るなど落ち着いた状態で行う、など一呼吸をおいて伝えましょう。
②指示内容が理解できていない
これは、上司と部下の情報・知識量の差によって起こることが多いといえます。部下がわからないことをその場で確認できずにあいまいに理解しているケースです。部下には1)上司に対する遠慮があり聞き返すことができない場合、2)聞くことによってわかっていないと思われたくないという自己防衛心が生じている場合があります。また上司から見れば当然わかっているであろうと思っていることでも、部下には見えていないことが多いものです。いずれにしても、指示内容を復唱してもらうなど、理解度を確認することが必要です。
③指示内容が正しく伝わっていない
このケースは、コミュニケーションが原因でないことも多いのですが、今回は敢えて「伝える上司側に問題がある」と捉えて考えてみましょう。
例えば、
・作業内容だけを伝えて、背景や目的、考え方などを伝えていない
・相手が具体的にイメージできるような話し方ができていない
・要点が明確ではない、だらだらとした伝え方をして重要点が理解されていない
・相手の理解度を確認しながら話ができていない
・上司からの指示部分と部下に与えている裁量部分を明確に区分して伝えられていない
など、自律的に考えられる要因がたくさんあります。「部下の理解力が低い」「指示した要点がつかめていない」など、原因を部下に求めてしまいたいところではありますが、今一度ご自身の伝え方を見直してみることも大事ですね。
コミュニケーションとは、見えていることが全く違うもの同士が意思疎通をして、情報を共有することです。
「自分が伝えたことが実行されるのではない、相手が受け取ったことがコミュニケーションの結果である」という言葉があります。
部下が間違った受け取り方をすれば、仕事上のミスやお客様へ迷惑をかけるなど、大きな問題となる可能性があります。あらためて上司側から「相手(部下)軸」でコミュニケーションをとることを意識していきたいものです。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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