制度やスキルだけで人は育たない! 人を育てる極意③

前回まで(https://jinji.jp/hrblog/12883/、https://jinji.jp/hrblog/13474/)、「育つ立場にある人(部下や後輩など)とどう向き合うのか?」の観点から、“人として対等である”、“相手の成長を願う”ことの重要性を述べてきた。
 
今回は、「(育てる側の)自分自身とどう向き合うのか?」の観点から、育てる極意(人を育てるマインド)について取り上げてみたいと思う。
 
まず最初に、そもそも、なぜ人を育てる必要があるのだろうか?
企業の成長のため、組織の発展のため、会社の存続のため、全くその通りである。
ただ、それだけで、人を育て続けることは果たしてできるのだろうか。
 
 
忍耐、忍耐、また忍耐・・・
人を育てるには「忍耐」が必要である。
 
教えても教えても変わらない…
伝えても伝えても伝わらない…
言っても言っても同じことの繰り返し…
何度も諦めたくなる、相手を自分を責めたくもなる。
怒り、腹立たしさ、不安、やるせなさ、
自分との格闘は続く…
 
それでも、可能性を信じて…
それでも、あきらめないで…
励まして、勇気づけて、認めて…
 
とかく、人を育てるには「忍耐」が必要である。
 
 
自分のための動機
だからこそ、忍耐という苦行に耐えうる「会社のため」だけではない
「自分のため」という動機が大切だと思う。
 
育てることは自分にとってどんな意義があるのか。
育てることは自分にどんなメリットをもたらすのか。
 
では、「自分のために」人を育てる動機とはどのようなものか?
 
例えば、
・育てることを通して自分が成長したい
・教えること自体が好き、楽しい
 但し、自己満足だけに陥らないように。
 
あるいは、
・人に任せて、もっと自分がやりたいことをしたい
・手離れして、これまでとは違う仕事をしたい
 但し、放任主義に陥らないように。
 
あるいは、
・他の人より教え上手でありたい
・育てることで周りから評価されたい
・自分のお陰で人が成長することが嬉しい
・誰かの役に立ちたい
 但し、「謙虚さ」を失わないように。
 
あるいは、
・とにかく部下を何とかしてあげたい
・成長しようとしている部下を放っておけない
 但し、過保護にならないように。
 
あるいは、
・このままでは仕事が回らない、自分が倒れる、やばい
 但し、放任主義に陥らないように。
 
等々
 
自分にはどんな動機があるだろうか。
動機は人それぞれでよい。
もちろん上記以外でもよい。
大切なことは、自分が人を育てる動機に気付くことである。
 
 
成長の糧
その上で、特に、私が強調したい動機は、自分の成長の糧であるということ。
 
人を育てるということは、
悩み、葛藤、怒り、恐れ、不安、喜び、楽しみ、充実感、発見、気づき、焦り、後悔、反省等々
いろんな経験と巡り合える。
 
すなわち、それは、自分という人間を磨き、成長させる、絶好の機会といえる。
そう意味づけたとき、人を育てることは、自らを育てる貴重な修行の場となる。
 
 
焦らずに、大きな器と広い心を持ち
育てることは”忍耐”と肝に銘じて。
その試行錯誤、悪戦苦闘、臥薪嘗胆の経験は、
必ずや自分自身の”成長の糧”になると信じて。
 
かく、一人一人が己と真剣に向きあったときに、人は育つものである。
その結果、企業の成長、組織の発展、会社の存続へと繋がるのではないだろうか。
そう自分自身にも言い聞かせて。

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

自社の経営に携わりながら、人材・組織開発、経営計画策定、経営相談など、幅広くクライアント業務に従事。中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、17年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら、バランス感覚を備えた、本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント/GCDF-Japanキャリアカウンセラー
iWAMプラクティショナートレーナー

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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