2024年 賃上げに関するアンケート調査結果

例年より高い賃上げを実施予定又は実施検討中の企業は28.8%
~中小企業では、業績を理由として賃上げ・ベースアップに限界感~

 全国の中堅中小企業を中心に人事コンサルティングサービスを提供する株式会社新経営サービス 人事戦略研究所は、賃上げ動向の実態把握のため、2024年賃上げに関する緊急のアンケート調査を実施しました。
 調査は、自社WEBサイトの利用者・メールマガジン購読者ならびに株式会社プロフューチャー運営のHRプロサイトの会員である経営者・人事担当者を中心に行い、302社からの回答を得て、結果を集計しました。

【結果の概要】

①2024年の給与改定において、例年よりも高い賃上げを実施済み又は実施を決めている企業が4.6%、実施に向けて検討中の企業が24.2%。一方で例年通りの賃上げのみ実施と回答した企業が29.1%、例年より低い水準が2.3%、賃上げを行わないという企業が8.6%となった。例年よりも高い賃上げに前向きな企業が28.8%に対して、例年通りの賃上げ又はそれ以下である企業が40%となっている。
②企業規模別にみると、50名未満の企業で、例年通りの賃上げが36.4%、例年より低い水準で賃上げを行うが1.5%、賃上げは行わないが15.2%となっており、例年よりも高い賃上げを行わない企業が5割を超えている。
③例年よりも高い賃上げを予定している企業に、「例年よりも上乗せする部分の賃上げ率」を聞いたところ、1~2%未満が最も多く27.3%、3~5%未満が23.9%、2~3%が21.6%となっている。
④例年よりも高い水準で賃上げを行わない企業にその理由を聞いたところ、「今の収益構造では、現状の賃金水準以上にすることができない」が38社と最も多くなった。

1.調査要領

調査要領

2.回答企業属性

【社員数区分(正社員)】

社員数区分(正社員)

【業種区分】

業種区分

3.全体集計結果
■昨年の賃上げ実施状況(2023年の賃上げ実施状況)
昨年の給与改定において、例年より高い賃上げを実施した企業は55%と半数を超える

 昨年の賃上げ状況について聞いたところ、例年通りの水準で賃上げを実施した企業が25.8%であるのに対して、例年より上乗せした賃上げを実施した企業は55.4%を占め、半数以上となっている。(図表①)

昨年の賃上げ実施状況(2023年の賃上げ実施状況)

■今年の賃上げ実施方針(2024年の賃上げ予定)
例年より高い賃上げを実施することを決めている企業は、検討中の企業を含め28.8%

 今回実施した2024年調査では、今年の給与改定において、例年よりも高い賃上げを実施済み又は実施を決めている企業が4.6%、実施に向けて検討中の企業が24.2%。一方で例年通りの賃上げのみ実施と回答した企業が29.1%、例年より低い水準が2.3%、賃上げを行わないという企業が8.6%となった。
 まだわからない、と回答している企業が3割程度あるものの、例年よりも高い賃上げに前向きな企業が28.8%であるのに対して、例年通りの賃上げ又はそれ以下である企業が40%となっている。(図表②)

今年の賃上げ実施方針(2024年の賃上げ予定)

■賃上げ実施方針(2024年調査と2023年調査の比較)
例年よりも高い賃上げをする企業は、昨年比で減少傾向、例年通りの企業が増加傾向

 また2023年度調査と比較してみると、「まだわからない」を除いた集計では、「例年より高い賃上げを実施済み又は実施を決めている」と「例年より高い賃上げを実施する方向で検討中である」と答えた、賃上げに前向きな企業が、2023年調査では68%であるのに対して、2024年調査では41%となっている。昨年よりも高い賃上げを行う企業は減少することが予想される。(図表③)

賃上げ実施方針(2024年調査と2023年調査の比較)

■賃上げ実施方針(2023年の賃上げ状況×2024年の賃上げ方針)
2023年は、例年よりも高い賃上げを実施したが、2024年は例年通り又はそれ以下となる企業が27%

 2023年の賃上げ状況と2024年の賃上げ方針について、それぞれ整理してみると、「昨年は例年より高い賃上げを実施し、今年も例年よりも高い賃上げを実施する企業」は31%(まだわからないと回答した企業を除く)、「昨年は例年より高い賃上げを実施したが、今年は例年通り又はそれ以下」と回答した企業が27%となっている。
 昨年に引き続き、賃上げ要請が高まる中、例年よりも高い賃上げを2年続けては実施しない企業が3割近くを占めていることがわかる。(図表④)

賃上げ実施方針(2023年の賃上げ状況×2024年の賃上げ方針)

■例年よりも高い賃上げをする理由
「物価高による社員の生活不安解消のため」が1位

 例年よりも高い賃上げに実施する理由を聞いたところ、「物価高による社員の生活不安解消のため」が65社で最多となっており、続いて「世間的な賃上げ動向に合わせるため」が60社、「採用難により、募集賃金や初任給引上げの必要性があるため」が51社となっている。(図表⑤)

例年よりも高い賃上げをする理由

■例年よりも上乗せする部分の賃上げ率
上乗せ部分の賃上げ率は、「1~2%未満」が最も高く、続いて「3~5%未満」

 例年よりも高い水準で賃上げを行う企業に、例年よりも上乗せする部分の賃上げ率について聞いたところ、1~2%未満が最も多く27.3%、2~3%が21.6%、3~5%未満が23.9%となっている。また5%以上の上乗せを実施する企業が1割程度あることがわかる。(図表⑥)

例年よりも上乗せする部分の賃上げ率

■賃上げの方法
「基本給に一定額を上乗せする」が最も多い

 例年よりも高い賃上げを行う企業に、賃上げ方法について聞いたところ、「基本給に一定額を上乗せする」(ベースアップ)企業が最も多く、47社、続いて「基本給の昇給率を引き上げる」が33社、「制度そのものを抜本的に見直す」と回答した企業が14社となっている。(図表⑦)

賃上げの方法

■賃上げの対象となる社員
年代別では、20歳代が最も多く、世代が高くなるほどやや少なくなる傾向

 賃上げの対象となる社員を世代別にみると、20代が最も多く、続いて30代となっている。年齢が高くなるほどやや減少する傾向にあり、若手の賃上げに力を入れる傾向が窺える。(図表⑧)

賃上げの対象となる社員

■例年よりも高い賃上げを実施しない理由

 例年よりも高い水準で賃上げを行わない企業にその理由を聞いたところ、「今の収益構造では、現状の賃金水準以上にすることができないため」が38社と最も多かった。(図表⑨)

例年よりも高い賃上げを実施しない理由

Q.昨今の賃上げの動きについて、お考えや懸念点などがあれば自由にご記入ください。(自由記入)

<賃上げに前向きな意見>

  • ・インフレが継続しており、賃金で対応するのはやむなしと考える。
  • ・賃上げから景気の好循環を続けていく必要がある。少なくともほとんどの上場企業にその体力はある。
  • ・物価高を背景に、賃上げは当然実施すべきで、結果生産性も向上するものと考える。
  • ・企業は、賃上げに限らず社会情勢の変化に対応することを求められるため、うまく対応していくしかない。
  • ・日本は世界的に見ればまだまだ賃金水準が低い為、他国との競争に勝っていく為にはここ数年の賃上げムードは十分に理解できる。
  • ・物価動向などをみて、柔軟に対応していきたいと考えている。
  • ・一年を通しての対前年インフレ率及び経団連の賃上げ率を参考としながら対応していきたい。

<賃上げを懸念する意見>

  • ・物価が上がっているのは確かだが、当社の業績は正直伸びていない。この中で全体的な賃上げは正直厳しい。
  • ・労働集約型の企業において、昨今の賃上げは不安材料でしかない。
  • ・世間では賃上げと叫ばれていますが、それに対応できるような力は中小企業にはないのが現状。
  • ・大手の賃上げ情報だけがピックアップされていることが懸念。
  • ・簡単に「賃上げ」というが、零細では到底難しい。
  • ・中小企業では、昨今報道されている大手企業の賃上げ率には及ばない。
  • ・一部の業界にとっては賃上げは厳しい。
  • ・弊社事業では今後の成長が見込みづらく、賃上げは厳しい。
4.企業規模別 集計結果
■昨年の賃上げ実施状況(2023年の賃上げ実施状況)
例年より高い賃上げを実施した企業は、50名未満の企業規模で37.8%

 昨年(2023年)の賃上げ実施状況を企業規模別でみると、例年より高い賃上げを実施した企業は、50名未満の企業規模で37.8%となっており、規模計(55.4%)と比較して明らかに低い傾向がみられる。(図表⑩)

企業規模別 昨年の賃上げ実施状況(2023年の賃上げ実施状況)

■2024年の賃上げ実施方針
例年通り、例年より低い、又は賃上げを行わないと回答した企業が50名未満の企業で5割を超える

 企業規模別集計を見てみると、50名未満の企業規模で、例年通りの賃上げが36.4%、例年より低い水準で賃上げを行うが1.5%、賃上げは行わないが15.2%となっており、例年よりも高い賃上げを行わない企業が5割を超えている。また、調査時点で「まだわからない」と回答している比率が最も高い1000名以上の企業を除き、企業規模が小さくなるほど、「例年よりも高い賃上げを実施済み又は実施を決めている」「例年より滝あ沈げを実施する方向で検討中である」の比率が小さくなっている。(図表⑪)

企業規模別 2024年の賃上げ実施方針

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 担当 川北智奈美(かわきた ちなみ)
Tel: 080-3607-1331  E-mail: kawakita@skg.co.jp
もしくは、株式会社新経営サービス 人事戦略研究所
Tel: 075-343-0770 Fax: 075-343-4714 までお願い致します。