各業界売上高トップ企業の人的資本開示

 人的資本開示とは、企業における人材についての取り組みや状況を、具体的な数値や情報として公開することを指します。

 常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、男女間の賃金格差(男性の賃金に対する女性の賃金の割合)、管理職に占める女性の比率等について、ホームページなどで開示することが企業に義務付けられています。また、常時雇用する労働者数が1,001人以上の事業主は、男性育児休業取得率又は男性の育児休業等及び育児目的休暇の取得率について、ホームページなどで開示することが企業に義務付けられています。
 上記いずれも、企業側は上場か非上場かを問わず、対応が必要となっています。

 そこで、世間水準として、いま実際にどの程度、男女間の賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得率があるのか、2023年3月23日時点の日経電子版の売上高ランキング(*)にある、各業界の売上高トップ3の企業の有価証券報告書で調査しました。

【結果の概要】
1.男女間の賃金格差(各業種売上高トップ3、男性=100として)

1.男女間の賃金格差(各業種売上高トップ3、男性=100として)

 表に載せた業界では、売上高トップ3の全企業の全労働者平均で、男性の賃金が女性の賃金を上回っている。また、特に建設業におけるトップ3の企業では、男女間の賃金格差が顕著であり、約50~60%となっている。商社におけるトップ3の企業でも同様の傾向が見られ、約55~65%となっている。
 一方、鉄道・バス業界の東日本旅客鉄道(JR東日本)は88.3%と、今回選んだ業界のトップ3の企業の中では、男女間の賃金格差が最も少ない。機械業界もトップ3の企業すべてが70%以上となっている。

2.管理職に占める女性の比率(各業種売上高トップ3)

2.管理職に占める女性の比率(各業種売上高トップ3)

 こちらの表に載せた、各業界売上高トップ3の企業における、管理職に占める女性の比率は、1社を除き16%以下にとどまっている。一方で、リクルートホールディングスに至っては、管理職の半数を女性が占めている。
 また、自動車業界トップ3企業のように、表に載せた各業界トップ3の企業の間でも、女性管理職比率はばらつきがあるものの、この中では商社だけが、トップ3いずれも8%を超えている。

3.男性育休取得率(各業種売上高トップ3)

3.男性育休取得率(各業種売上高トップ3)

 表を見ると、機械業界の売上高トップ3の企業のうち2社と、自動車業界の売上高トップ3の企業のうち1社以外は、いずれも40%を超えている。また、日本郵政と積水ハウスは100%以上となっており、積水ハウスは114.8%となっている。

 ここまで述べてきた通り、表に掲載した業界の売上高トップ3の企業だけ見ると、男女間の賃金格差は業界ごとの特色があり、管理職女性比率は会社ごとに大きく異なり、男性育休取得率は3社以外40%を超えており、うち2社では100%を超える結果となった。

(*)出所
https://www.nikkei.com/markets/ranking/page/?bd=uriage

【企業名の右の注記】

*1.正規労働者(それ以外の労働者は0.0%)
*2.係長級以上にある者に占める女性労働者の割合(臨時従業員を含まない)
*3.男性の育児休業取得率は、育児休業等の取得割合(当事業年度において雇用する男性労働者のうち育児休業等を取得した者の数/当事業年度において雇用する男性労働者のうち配偶者が出産した者の数)により算出
*4.総合職(一般職は記載なし、その他正社員は50.0%、契約社員は85.7%)