最低賃金レポート(2026年度版 速報)~地方最低賃金審議会の答申速報~

本レポートのポイント

  • 都道府県別最低賃金の最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円となった【図表1】
  • 2026年都道府県別最低賃金の全国加重平均(答申額)は1,177円で昨年比+56円、引上げ率は+5.0%【図表3】
  • 2023年以降、最低賃金引上げ率が4%以上の高水準で推移している一方、2026年度(+5.0%)は2025年度(+6.3%)よりも引上げ率は鈍化した【図表6】
  • 地方圏の引上げ額が大都市圏と比較して大きく、都道府県別の格差(最低額÷最高額)は10年間で76.9%から84.8%へ縮小した【図表7】
  • 2030年代前半の全国平均1,500円の達成に向けて、今後も最低賃金の引上げは継続すると見込む【図表8】

本レポートは、2026年度の地方最低賃金審議会答申を踏まえ、最低賃金の到達水準と今後の見通しを速報的に整理したものです。中小企業の経営者・人事担当者の皆様が、自社の賃金水準を見直す際の参考指標としてご活用ください。
なお、本レポートにおける「最低賃金」とは、産業や職種にかかわらず、都道府県内で働くすべての労働者と使用者に適用される「地域別最低賃金」を指します。

目次

  1. 2026年度 都道府県別最低賃金<答申額>一覧
  2. 2026年度答申の全体像
  3. 最低賃金(全国加重平均額)の推移
  4. 都道府県別の格差の推移
  5. 今後の最低賃金引上げの見通し
1.2026年度 都道府県別最低賃金<答申額>一覧

2026年度の各都道府県における地方最低賃金審議会の答申額を一覧で示します。

【図表1】都道府県別最低賃金<答申額>一覧

【図表1】都道府県別最低賃金<答申額>一覧

【図表2】引上げ額の上位5都道府県

【図表2】引上げ額の上位5都道府県

中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会からの答申内容 をもとに弊社作成

ポイント

  • 都道府県別の最高額は東京で1,280円、最低額は宮崎県で1,085円となった。
  • 引上げ額が最も大きかったのは佐賀県で+65円であり、最も小さかったのは東京都、大阪府、神奈川県で+54円であった。
  • 引上げ額の上位は最低賃金が相対的に低かった地方圏に集中し、下位は大都市圏の都府県に集中する傾向が見られた。
2.2026年度答申の全体像

2026年度の地方最低賃金審議会の答申により、地域別の最低賃金の全国加重平均額は1,177円(前年比 +56円/+5.0%)となり、中央最低賃金審議会が示した目安額1,176円を上回る結果になりました。

【図表3】2026年度における最低賃金の全国加重平均額

【図表3】2026年度における最低賃金の全国加重平均額

【図表4】目安額と答申額の関係

【図表4】目安額と答申額の関係

中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会からの答申内容 をもとに弊社作成

【図表5】中央最低賃金審議会のランク別引上げ目安

【図表5】中央最低賃金審議会のランク別引上げ目安

厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」 をもとに弊社作成

ポイント

  • 最低賃金の全国加重平均額は1,177円で、前年比+56円/+5.0%となり、2025年の+66円/+6.3%からは引上げペースが鈍化した。
  • 中央最低賃金審議会の目安に対して、33都道府県が上回る答申額を示している。目安に対する最大上乗せ幅は佐賀県の9円であり、昨年度のような目安から10円以上の大幅な上乗せは確認されていない。
3.最低賃金(全国加重平均額)の推移

10年スパンで最低賃金の水準および引上げ率をみると、毎年最低賃金の引上げが行われ、特に2023年以降高い引上げ率が続いています。ただし、2026年度は2025年度と比較すると引上げ率の鈍化が見られました。

【図表6】最低賃金(全国加重平均)の推移(過去10年間)

【図表6】最低賃金(全国加重平均)の推移(過去10年間)

中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会からの答申内容 をもとに弊社作成
※2026年度は各地方最低賃金審議会の答申結果を基に算出した数値を使用

ポイント

  • 最低賃金の引上げは10年を通じて継続している。
  • 2017年度の848円から2026年度の1,177円へ、10年間で+329円(+38.8%)の上昇となった。
  • 引上げ率は2010年代後半には3%程度(コロナ禍の影響が大きかった2020年度は除く)で推移してきたのに対し、2023年度以降は4%を超える高い水準で引上げ率が続いている。ただし、2026年度は2025年度よりも引上げ率が下がった。
4.都道府県別の格差の推移

都道府県別の最低額÷最高額の比率は2026年度で84.8%となり、年々格差が小さくなってきています。

【図表7】都道府県別の格差の推移(過去10年間)

【図表7】都道府県別の格差の推移(過去10年間)

中央最低賃金審議会および地方最低賃金審議会からの答申内容 をもとに弊社作成

ポイント

  • 2025年度時点で、すべての都道府県で1,000円に到達した。
  • 最低額÷最高額の比率は10年間で76.9%から84.8%へと上昇し、地域間格差は継続的に縮小している。
5.今後の最低賃金引上げの見通し

政府は2026年7月21日に「日本成長戦略」および「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太方針2026)」を閣議決定しました。最低賃金について、日本成長戦略では、2020年代に全国平均1,500円という従来の高い目標を維持しつつ、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に1,500円を達成する方針を明記しています。これにより、従来の「2020年代に達成」から、達成期限は実質的に後ろ倒しされたと捉えられます。2026年度の答申額を基にした全国加重平均額1,177円を起点にすると、1,500円までの差は323円です。

【図表8】政府目標までの到達経路の試算

【図表8】政府目標までの到達経路の試算

また、最低賃金1,500円が実現した場合、月間所定労働時間を160時間と仮定した場合に、フルタイム正社員の最賃ラインの月給は24万円(1,500円×160時間)となります。

上記も踏まえて、今後の最低賃金引き上げの見通しに関する筆者の見解は以下の通りです。

  • 1,500円の達成時期は実質的に後ろ倒しされ、毎年100円近い引上げを直ちに続けなければならないという前提ではなくなった。一方で、政府目標そのものは維持されており、2026年度の答申額と同程度の年50~60円程度の引上げが中期的に続く可能性は十分にある。
  • 日本成長戦略では、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正も掲げられている。引上げ額の地方圏偏重は今後も続くと予想され、地方に拠点を持つ中小企業ほど人件費インパクトが大きくなることが想定される。
  • 最低賃金の継続的な上昇は、最低賃金近傍の従業員だけでなく、初任給や若手層、既存社員の賃金レンジ全体にも波及する。単年度の「最賃対応」にとどめず、賃金カーブや等級別レンジを含む賃金制度全体を中期的に再設計する視点が、これまで以上に重要になる。
参考:最低賃金の決定プロセス

地域別最低賃金は、以下のプロセスを経て改定されます。

  1. 厚生労働大臣が中央最低賃金審議会に諮問(例年6~7月)
  2. 中央最低賃金審議会が、都道府県を経済実態に応じてA~Cの3ランクに区分し、ランクごとの引上げ額の目安を答申(例年7~8月)
  3. 各地方最低賃金審議会が、目安を参考にしつつ地域の賃金実態調査等を踏まえて審議し、都道府県労働局長に答申(例年8~9月)
  4. 都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定・公示(例年10月以降に順次発効)

※本レポートの掲載データは公的統計に基づく事実情報を中心としつつ、一部に筆者の見解・解釈を含みます。データの引用・転載にあたっては出所を明記してください。