初任給水準レポート(2026年版)~令和7年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より~

本レポートのポイント

  • 大学卒の初任給(全規模計)は 262.3千円(前年比+5.6%) で、初めて26万円台に到達。高校卒も 207.3千円(前年比+5.0%) と全学歴・全規模で上昇が続く【図表1】
  • 大学卒1,000人以上規模は10年間で +53.5千円(+24.3%) 上昇。特に2021年以降のペース加速が顕著で、直近5年の伸びは前半5年の約4倍【図表2】
  • 大学卒の業種間格差は最大 53.8千円。人手不足が深刻な対人サービス系業種で低水準が目立つ【図表3】
  • 高校卒は業種間格差が 25.9千円 と大学卒の約半分。大学卒で高水準だった医療・福祉・金融が高校卒では平均を下回る逆転現象が発生【図表4】

本レポートは、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」のうち、新規学卒者の初任給データをもとに分析・解説したものです。中小企業の経営者・人事担当者の皆様が、自社の初任給水準を見直す際の参考指標としてご活用ください。
なお、本レポートにおける「初任給」とは、新規学卒者の所定内給与額(月額)を指します。基本給・職務手当・精皆勤手当・通勤手当・家族手当などが含まれ、時間外勤務手当・深夜勤務手当・休日出勤手当・宿日直手当・交替手当は含まれません。

目次

  1. 2025年の初任給水準(学歴別・企業規模別)
  2. 初任給水準の推移
  3. 業種別の初任給水準(大学卒)
  4. 業種別の初任給水準(高校卒)
  5. 総括と提言
1.2025年の初任給水準(学歴別・企業規模別)

全学歴・規模において初任給の上昇が続いており、大学卒は初めて26万円台に到達しました。また、規模による格差は依然大きく、大企業ほど高水準となっています。

【図表1】学歴別・企業規模別初任給一覧(2025年、男女計)

【図表1】学歴別・企業規模別初任給一覧(2025年、男女計)

「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)をもとに弊社作成

ポイント

  • 大学卒(全規模計)は 262.3千円(前年比 +5.6%)であり、初めて26万円台に到達した。高校卒は 207.3千円(前年比 +5.0%)となった。
  • 全体的に企業規模による格差が顕著で、大学卒では1,000人以上(273.4千円)と10-99人規模(242.4千円)の間に約31.0千円の差がある。
  • 2025年度の全国加重平均最低賃金(時給1,121円)を月所定労働時間160時間で換算すると約179.4千円となり、2025年の高校卒・10〜99人規模の初任給199.9千円との差は約20.5千円にとどまる。
2.初任給水準の推移

10年スパンで初任給の水準をみると、2021年以降は上昇ペースが明確に加速しており、直近5年の伸びが過去5年を大きく上回っています。

【図表2】大学卒・高校卒の初任給の推移(過去10年間)

【図表2】大学卒・高校卒の初任給の推移(過去10年間)

「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)をもとに弊社作成

ポイント

  • 大学卒・高校卒ともに、初任給の引上げは10年を通じて継続している。大学卒(1,000人以上)は2016年の219.9千円から2025年の273.4千円へ、10年間で +53.5千円(+24.3%)の上昇となった。高校卒(1,000人以上)も同期間に176.5千円から216.5千円へ +40.0千円(+22.7%)上昇しており、初任給引上げの継続は学歴・規模を問わない構造的な流れとなっている。
  • 企業規模間の格差は10年間で拡大している。大学卒における1,000人以上と10〜99人規模の差は、2016年の 13.0千円から2025年には 31.0千円へと約2.4倍に拡大した。高校卒でも同格差が7.7千円から16.6千円へと広がっており、大規模企業が初任給引き上げを先行させる一方、中規模・小規模企業との差が縮まらない状況が続いている。
  • 前半5年(2016〜2021年)と後半5年(2021〜2025年)を比較すると、上昇ペースが大幅に加速していることがわかる。大学卒・1,000人以上規模の上昇幅は前半の +9.9千円に対し後半は +43.6千円と約4倍超、高校卒・1,000人以上でも前半の+5.4千円に対し後半は +34.6千円と約6倍超となった。2021年以降の賃上げ機運の高まりと最低賃金の大幅引き上げが、初任給上昇を急加速させた要因と考えられる。
3.業種別の初任給水準(大学卒)

大学卒の初任給水準は、業種によって大きな開きがあり、学術研究・専門技術サービス業が突出して高い一方、対人サービス系業種では低水準にとどまる傾向が見られます。

【図表3】大学卒の業種別初任給(2025年、男女計、企業規模計)

【図表3】大学卒の業種別初任給(2025年、男女計、企業規模計)

「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)をもとに弊社作成

ポイント

  • 業種間の初任給格差は大きく、最高の学術研究・専門技術サービス業(290.1千円)と最低の複合サービス事業(236.3千円)の差は 53.8千円 に達する。
  • 全業種平均を上回る業種は、学術研究・専門技術サービス業(290.1千円、+27.8千円)、不動産業・物品賃貸業(271.2千円、+8.9千円)、医療・福祉(270.9千円、+8.6千円)、建設業(269.8千円、+7.5千円)、金融業・保険業(266.7千円、+4.4千円)である。
  • 全業種平均を10千円以上下回る業種は、複合サービス事業(236.3千円、-26.0千円)、宿泊業・飲食サービス業(245.4千円、-16.9千円)、サービス業(245.8千円、-16.5千円)、運輸業・郵便業(249.7千円、-12.6千円)、生活関連サービス業・娯楽業(250.4千円、-11.9千円)、教育・学習支援業(250.6千円、-11.7千円)であり、人手不足が深刻な対人サービス系業種で低水準が目立つ。
4.業種別の初任給水準(高校卒)

高校卒の初任給水準は、大学卒と比べて業種間の格差が小さい一方で、大学卒では高水準だった業種が高校卒では平均を下回るなど、学歴によって業種ごとの位置づけが大きく異なります。

【図表4】高校卒の業種別初任給(2025年、男女計、企業規模計)

【図表4】高校卒の業種別初任給(2025年、男女計、企業規模計)

「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)をもとに弊社作成

ポイント

  • 業種間の格差は大学卒と比べて小さく、最高の建設業・運輸業(いずれも214.1千円)と最低の医療・福祉(188.2千円)の差は 25.9千円 にとどまる。大学卒の業種間格差(53.8千円)の約半分であり、高校卒の初任給は業種を問わず最低賃金水準に収斂しやすい構造を反映している。
  • 全業種平均を上回る業種には、建設業(214.1千円、+6.8千円)、運輸業・郵便業(214.1千円、+6.8千円)、宿泊業・飲食サービス業(211.2千円、+3.9千円)、学術研究・専門技術サービス業(210.3千円、+3.0千円)などがある。大学卒では平均以下だった宿泊・飲食が高校卒では上位に位置する点が特徴的である。
  • 医療・福祉は188.2千円(-19.1千円)と全業種で最も低く、大学卒では平均を +8.6千円上回っていたことと対照的である。また金融業・保険業(199.9千円、-7.4千円)、卸売業・小売業(199.3千円、-8.0千円)も平均を下回っており、大学卒では高水準だった業種が高校卒では逆転するケースが目立つ。
5.総括と提言

ここまでのデータを踏まえ、実務対応における筆者の見解を示します。

実務対応上のポイント

  • 初任給の引上げのみならず、賃金テーブル全体の見直しがセットで必要である。初任給水準が上昇すると、既存の賃金テーブルの設計によっては入社2〜5年目の社員との逆転現象が生じやすくなり、既存社員のモチベーション低下や離職につながるリスクがある。初任給を引き上げる際には、号俸におけるピッチや定期昇給の幅を含め、賃金カーブ全体を合わせて見直すことが不可欠である。
  • 基本給引上げによる、賞与・退職金制度への影響も加味する必要がある。賞与が基本給連動の係数方式である場合、基本給の引上げにより賞与総額が増加する。また退職金が基本給に連動する場合、将来の支払い総額が想定以上に膨らむリスクがある。初任給の改定にあたっては、賃金単体ではなく、賞与・退職金を含む人件費総額でのシミュレーションを必ず行うことを推奨する。
  • 資金余力の限られる中規模・小規模企業にとって、大企業の賃金水準に追従するには限界がある。初任給の絶対額で差がある場合でも、「入社後の昇給カーブの透明性」「評価と連動した昇格・昇給の仕組み」「成長機会の提示」を採用訴求の軸に据えることが現実的かつ有効な戦略となる。
  • 本レポートのような外部データと自社の賃金水準を定期的に照合する仕組みを持つことが重要である。計画的な賃金改定を行う中で初任給の引上げの判断を行うことが望ましい。場当たり的な対応の積み重ねは賃金テーブルの歪みを拡大させるため、定期的な市場水準との照合と制度全体の点検を継続的に行うことを推奨する。

※本レポートの掲載データは公的統計に基づく事実情報を中心としつつ、一部に筆者の見解・解釈を含みます。データの引用・転載にあたっては出所を明記してください。