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小売業の人事制度設計のポイント

小売業の業界特性をおさえた人事制度設計の基本を解説

小売業の人事制度設計のポイント

約11分

動画の内容

建設業における業界事情や制度改定事例をご紹介。
建設業の人事や人事制度設計方法について、コンサルタントが解説します。

ーもくじー

クリックすると、「小売業の人事制度設計のポイント」動画の文字起こし(各パート)が表示されます。

はじめに

皆さんこんにちは。株式会社新経営サービス、人事戦略研究所の森谷です。
この動画では、小売業における人事制度策定のポイントを解説させていただきます。

小売業といってもさまざまありますが、主にこの動画では店舗系小売業を前提としていますので、ご留意いただければと思います。

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産業別の賃金水準グラフ

建設業における業界事情とは?① 外部環境

まず最初にご覧いただくのは、産業別の年収データグラフになります。
これは厚生労働省が発表しています「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、弊社で加工して、グラフ化したものになります。赤の実線が小売業になります。
ご覧いただくと、一目瞭然で、全産業と比較してかなり低い賃金水準であることがご覧いただけると思います。他産業と比較して見劣りする中で、いかに人材を確保するのか、人事制度の設計のポイントについて見ていきたいと思います。

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小売業における3つの人事課題

建設業における業界事情とは?② 内部環境

小売業における人事課題は大きく3つあると考えています。

1つ目は、人件費の増加要因が多いこと

2つ目は、出店の影響を受けやすいこと

3つ目は、慢性的な人不足であること

です。

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1-1.人件費の増加要因

建設業の人事課題とは?

1つ目の人事課題、人件費の増加について、さまざまな要因があります。
例えば、最低賃金はどんどん上昇していますし、同一労働同一賃金へ対応する必要もあります。社会保険の適用は拡大され、また労働市場全体の賃金水準が上昇している、ということもあります。

考え方としましては、「人件費ミックス」というものを持つということが考えられます。
小売業では、「粗利ミックス」という言葉があります。粗利率の低い目玉商品と、粗利率の高い商品をミックスさせて販売することで、全体の利益率を確保していくという考え方ですが、これは人件費でも同じことが言えます。

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1-2.人件費ミックス ―限定社員制度―

参考① 新卒者の3年内離職率(大卒)

人件費の増加に対する、1つ目の施策は限定社員制度です。これは何らかの要件について制限をかける制度です。
限定社員制度の要素としては大きく3つ。「勤務地」限定制度、「職務」限定制度、「時間」限定制度の3つになります。中でも有名なのは、「勤務地」限定制度です。

例えば、「移動はエリア内の店舗に限る」といったものや、あるいは「本人の自宅から片道通勤時間1時間半以内に限る」、もしくは「指定する店舗に限る」、こういったものになります。
こういった勤務条件に制限がある社員とない社員で、一般的には処遇に差を設けます。

処遇の要素としては、昇進昇格や基本給、諸手当、賞与、退職金といったものになります。特に大きな要因は、基本給ということになるでしょうか。

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1-3.人件費ミックス ―複線型人事制度―

参考② 大卒 新卒者初任給データ

人件費の増加に対する2つ目の施策は、複線型の人事制度を設けることです。
例えば、お示しをしています事例企業については、大きな区分としては、「ナショナル社員」と「エリア社員」があります。
ひとことで言いますと、「ナショナル社員」は転勤ができる社員、「エリア社員」については転勤ができない社員、というふうに区分するのがわかりやすいでしょうか。

ただ、その中でもナショナル社員でありながら異動ができないという、期間限定エリア社員、あるいはエリア社員の中でも期間限定で異動ができる、期間限定ナショナル社員というものを設けています。
移動ができる、できないについては、さまざまなライフステージによって異なったりもしますので、単純に2つで区分するのではなくて、あいだを設け、4つに区分した例ということになります。
ご覧いただいている給与水準は、あくまでイメージということになりますが、例えば、純粋なナショナル社員を100%としたときに、期間限定エリア社員を90%、エリア社員を80%、エリア社員の中でも期間限定で異動できるナショナル社員を概ね85%、といった形で設定することで、人件費ミックスが実現できます。

先ほどの限定社員制度、そしてこの複線型の人事制度、どちらにもいえることですが、目的はあくまで人件費ミックスです。
人件費を押し下げるというだけではなくて、その押し下げた人件費を、いかに優秀な社員に振り向けて活躍を促していくか、というところが、本来あるべき姿ということになります。

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2-1.新規出店が多い場合 ―ポスト増への対応―

制度改定事例① 採用強化・定着率向上

2つ目の人事課題は、出店の影響を受けやすいことです。出店については、出店が多く続いている場合と、逆に出店が滞っている場合があります。このページでは、新規出店が多い場合について見ています。

新規出店が続く場合の一番の課題は、人員を充足させるということです。この事例企業では、今後1年間に2~4店舗の出店を予定しています。
当然、店の数に対して、1人の店長が必要ということになりますが、優秀な店長はそう簡単に育つものではありません。
この事例企業では、店舗責任者に副店長を抜擢することで、何とか店舗数をカバーしていこうとしています。見ていただきますと、店長と副店長を足した数が、期末の店舗数ということになっています。

ただし、今後ずっと副店長クラスに店舗責任者を任せるわけにはいきませんので、どんどん店長を育成していく必要があります。
ご覧いただきますと、店長と副店長の比率について、最初は12名対8名だったのが、最終的には37店舗、全店舗に店長を配置するというふうな計画を立てました。
店長に限らず、本部においても人員を増やす必要があるかもしれません。こういった、出店計画に対して人員を充足させるために、いろんな方針を持っておくことが必要になります。

人事制度という話になりますと、例えば、

不足する人員について、改めて必要な実績・能力を整理して、等級要件や評価基準に落とし込む

不足する人員について、育成・採用・異動の面から調達手段を検討する

場合によっては、部分的にでも報酬制度の見直しを行う

といったことが必要になるかもしれません。

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2-2.新規出店が停滞している場合 ―ポスト不足への対応―

制度改定事例② 技能伝承

先ほどは新規出店が続いている事例を見ていきましたが、ここでは逆に、新規出店が停滞している事例を見ていきます。
新規出店が停滞している場合、起こりやすいのはポスト不足です。そこにどう対応していくのか、人事制度で受け皿を設けておくのもひとつです。

ご覧いただいているのは、「等級と役職の関係図」です。
左側に「店舗」、右側に「商品部・管理部」といったものがあり、「等級と役職の関係図」を表しているというものになります。
ポストが不足した場合、いかにこういったキャリアパスを提示したとしても、「どのみち自分が店長になるのはずいぶん先だ」「課長になるのはずいぶん先だ」こういった意識を社員が持ってしまうということになります。

この事例では、期間限定プロジェクト制度というものを設けることにしました。
期間限定プロジェクトについては、例えば「数ヶ月から1年ぐらいの単位で区切っていただき、全社課題の解決を行う」ようなプロジェクトを立ち上げる、といったものです。見ていただくと、プロジェクトリーダーは課長や店長と同クラスということになります。

ポストの数に限りがある場合、いかにキャリアを逃がしていくか、ということが必要になりますが、こういった形で、例えば期間限定プロジェクトを設けて、そこに招集されることに価値を持たせることで、一定のモチベーション維持が期待できます。
役職ポスト以外で、動機付けを行う施策のひとつ、ということになります。

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3.採用強化、リテンションなどの諸施策

建設業の人事課題とは?

最後、3つ目の人事課題は、慢性的な人不足です。
残念ながら、慢性的な人不足に対して、特効薬はありません。さまざまな施策を組み合わせて、実施していくことが必要になります。
例えば、多様な働き方に対応するために、短時間勤務制度や短日数勤務制度を設け、月給が低い場合などは、月給を引き上げると人件費に大きく影響を及ぼしますので、例えば、固定的に賞与を支払っているのであれば、その賞与から一部を月給に組み入れる、ということなどもできたりします。

戻りやすい環境を作るために、カムバック制度、育休制度の充実を行う

信頼のおける要員を確保するためにも、アルバイト紹介制度を設ける

若手社員の離職防止のために、メンター制度、ヘルプラインの設置を行う

さまざまなリテンション施策も、本当の退職理由がわからなければ、手の打ちようがありません。ある会社では、退職者に対して、匿名で本音の退職理由を書いてもらい、送ってもらう、ということを実施しています。
最近では書き込みサイトなどもたくさんありますので、人事部でそういったものを定期的にチェックしていく、ということも重要になります。

小売業では、店長以降のキャリアパスというものが、大きな問題になります。
シニア店長制度については、店長と地区長の間に1つのポストを設ける制度です。これは店長の上位職の役割で、例えば地区長よりも狭い範囲、2~3店舗を統括・管理していくポストということになります。
根本的な原因として、人事部が弱いという会社もあるかもしれません。営業・現場の優秀な社員を人事部に配置する勇気を持つ、ということも大切になります。
こういった施策については聞いたことがある、というものが多いと思いますが、実際に取り入れられていない企業様も多いと思いますので、検討していただければと思います。

以上、ポイントの解説だけになりますが、ぜひ有効活用していただければと思います。ありがとうございました。

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執筆者

森谷 克也 
(常務執行役員 所長)

企業の内部環境・外部環境の変化を想定し、企業の成長を下支えする人事戦略の策定・推進が図れるよう、「経営計画-人事制度-人材育成」を一連でデザインする組織・人事コンサルタントとして実績を積んでいる。
カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。