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無期転換、正社員化に伴うキャリアアップ助成金が増額

 有期契約社員を無期転換あるいは正社員化した際に受給できるキャリアアップ助成金が、平成28年2月10日より拡充されました。主な増額は、[図表1]のとおりです。

[図表1]キャリアアップ助成金の支給額(平成28年2月改定後)

助成金対象 改定後 改定前
有期雇用から正規社員 1人当たり60万円(45万円) 1人当たり50万円(40万円)
有期雇用から多様な正社員 1人当たり40万円(30万円) 1人当たり30万円(25万円)
有期雇用から無期雇用 1人当たり30万円(22.5万円) 1人当たり20万円(15万円)

※( )内は、中小企業以外の助成額。中小企業の範囲については、本文後段『◆業種により異なる中小企業の基準』を参照ください。

 まさに、政府は本気で有期社員の正社員化を推し進めようとしています。これまで申請手続きなどの煩雑さなどを理由に、本制度活用を見送ってきた企業も、ぜひとも積極的に検討すべきでしょう。

◆キャリアアップ助成金の概要

 キャリアアップ助成金は、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成する制度で、六つのコースから成り立っています。ここでは特に、「正規雇用等転換コース」と「多様な正社員コース」について、おさらいをしておきましょう。

[図表2]キャリアアップ助成金の概要

※厚生労働省「キャリアアップ助成金のコース一覧」より抜粋。詳細は厚労省リーフレットを参照

 各コースとも受給の上限が設けられており、 「正規雇用等転換コース」は、[図表2]の雇用パターン①~③を合わせて1年度1事業所当たり15人まで(②を実施する場合は10人まで)。「多様な正社員コース」は、「週所定労働時間延長コース」(本稿では非掲載)と合わせて1年度1事業所当たり10人までとなっています。
 また、この制度では、労働者を以下の定義で区分しています。

[図表3]制度上の「労働者」の定義

有期契約労働者
○ 期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)をいいます。
無期雇用労働者
○ 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのない労働契約を締結する労働者を含む)のうち、正規雇用労働者、勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員以外のものをいいます。
正規雇用労働者
○ 次のイからホまでのすべてに該当する労働者をいいます。
イ 期間の定めのない労働契約を締結している労働者であること。
ロ 派遣労働者として雇用されている者でないこと。
ハ 同一の事業主に雇用される通常の労働者と比べ勤務地または職務が限定されていないこと。
ニ 所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同じ労働者であること。
ホ 同一の事業主に雇用される通常の労働者に適用される就業規則等に規定する賃金の算定方法および支給形態、賞与、退職金、休日、定期的な昇給や昇格の有無等の労働条件について長期雇用を前提とした待遇が適用されている労働者であること。
多様な正社員 ○ 勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員をいいます。

◆業種により異なる中小企業の基準

 さて、キャリアアップ助成金において、判断に迷うのは、以下の2点ではないでしょうか。

①自社は、中小企業なのかどうか
②「1事業所当たり(15人あるいは10人まで)」の、1事業所とは1社という意味か

 まず、中小企業かどうかは、[図表4]の基準で判断されます。

[図表4]「中小企業」の範囲(正規雇用等転換コース)

業種 資本金・出資金   常時雇用労働者数
小売・飲食業 5000万円以下 または 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

※「多様な正社員コース」での「中小企業」は、一律300人以下の事業所

 この表で、資本金か労働者数か、いずれか一方でも基準を満たせば、中小企業ということになります。業種区分で、複数の業種にまたがるような会社は難しいですが、製造小売りのベーカリーのようなケースは小売業になるようです。

 また、資本金基準は明確ですが、「常時雇用労働者数」には、契約社員やパートタイマーは含まれるでしょうか。この「常時雇用労働者」とは、労働基準法20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」ということになっており、以下のようなケースを除いては、契約社員やパートタイマーも対象となります。

・日々雇い入れられる者(1カ月超の継続雇用者除く)
・2カ月以内の期間を定めて使用される者 (所定期間超の継続雇用者除く)
・季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者(所定期間超の継続雇用者除く)
・試の使用期間中の者(14日超の継続雇用者除く)

 一般的にパート・アルバイトの割合が多い業種である、小売業や飲食業にとっては厳しい基準設定ですが、現時点ではこのようになっています。
 ただし、「多様な正社員コース」における「中小企業」は、業種に関係なく一律300名以下という基準が設けられているので、注意が必要です。

◆事業所と会社はイコールではない

 先に触れたとおり、「正規雇用等転換コース」では、有期社員を正規雇用に転換した際、1年度ごとに1事業所当たり15人までが助成金の対象になります。一見、「1社15人まで」と捉えがちですが、1社ではなく1事業所当たりです。この場合の「事業所」とは、雇用保険の適用事業所単位を指しています。
 原則として、支店や営業所などの事業拠点ごとに、雇用保険の適用事業所の申請を行うことになっています。ただし、事業所が以下のような条件を満たす場合には、申請により本社などで一括処理することが可能です。

【雇用保険事業所 非該当承認基準】

・人事、経理、経営上の指揮監督、賃金の計算、支払等に独立性がないこと

・健康保険、労災保険等他の社会保険についても、本社など主たる事業所で一括処理されていること

・労働者名簿、賃金台帳等が、本社など主たる事業所に備え付けられていること

 例えば、ある小売業で、本社のほかに全国五つの支社があり、その下に多数の店舗を運営しているものの、店舗は雇用保険の適用事業所となっていないとします。このケースでは、本社を含め六つの事業所ごとに年間15人ということですから、15人×6=最大90人まで助成金の申請が可能となります。

 ちなみに東京都では、東京労働局管内の雇用保険適用事業所に対して、国のキャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)に上乗せして1人当たり最大50万円を助成する制度を打ち出しています。合わせて、1人当たり110万円にもなる計算ですので、この「(雇用保険適用)事業所」の概念は極めて大きな意味を持っているといえるでしょう。

◆助成金支給までの流れ

1.キャリアアップ計画の作成・提出(転換等実施する1カ月前までに提出)

2.就業規則、労働協約またはこれに準じるものに転換制度等を規定

3.転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施

4.多様な正社員への転換・直接雇用および短時間正社員の新規雇い入れを実施

5.転換等後6カ月分の賃金を支給・支給申請

6.支給決定

→対象となりそうな会社は、まずは専門家に相談を!

 「キャリアアップ助成金」申請を行う場合、諸条件や提出書類も複雑なため、厚生労働省ホームページで公開されている資料等をを確認し、労働局・ハローワークもしくは社会保険労務士など専門家に相談の上で、実施したほうがよいでしょう。
 ※厚生労働省「キャリアアップ助成金」資料はこちらのサイトからご覧ください

執筆者:山口俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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