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「ジョブ型人事」と「成果主義人事」の違い①

2020年11月01日 カテゴリ:人事制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 上席コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

コロナ禍による企業の人材マネジメントへの影響は様々な部分に及んでおり、その結果、多くの企業がこの未曾有の危機を契機として、抜本的な人材マネジメント改革に取り組もうとしています。このような人事トレンドの中で、この数ヶ月の間、特に大きな話題となっているのが「ジョブ型雇用・人事への転換」ではないでしょうか(※「ジョブ型雇用」と「ジョブ型人事」は、厳密には異なる領域のテーマになります。本稿では処遇面に強く絡む「ジョブ型人事」を前提として、以降の文を進めます)。この「ジョブ型人事」とは、極めて簡潔に定義すれば、"仕事(職務・役割)を軸にした人事制度"となります。

 

さて、この「ジョブ型人事」ですが、昨今、様々なメディアで取り上げられており、また同業者である人事コンサルタントも多くの執筆や講演を行っています。「ジョブ型人事」を具体的にどのような仕組みとして定義するかについては、各々の捉え方や見解による違いが少なからずあって然るべきであり、必ずしもどれが正解・誤りということはないでしょう。ただ、15年以上、人事コンサルタント業界で人事制度設計を主たる生業としてきた小生にとって、どうしても気になる点、考え方を整理しておきたいテーマがあります。それが、今回のブログのテーマである「ジョブ型人事と成果主義人事は同じなのか?違うのか?」です。

 

小生の見解に基づく結論からまず申し上げれば、社員の処遇を決定するための仕組み、すなわち人事制度(等級・評価・賃金制度)において、「ジョブ型人事」と「成果主義人事」は必ずしも同一ではない、ということです。少し婉曲的な言い回しになっていますが、より詳しく言えば、「両者は根本的・本質的には異なる仕組みではあるものの、実際の人事制度の構築・導入にあたっては、両者を併用するケースも多分にある(※特に、ジョブ型人事を主軸に据える場合には、成果主義人事を併せて導入するケースが多い)」ということです。

 

90年代後半から2000年代前半にかけて、日本企業の人事制度領域では「成果主義」の導入が大きなトレンドになりました。それまでは、年功的(含む年功的な能力主義)な人事制度を運用している日本企業が大半でしたが、平成大不況の中、人件費削減の大義名分としてこの「成果で社員を処遇する仕組み」を、規模や業種を問わず多くの企業がこぞって導入しました。

この「成果主義人事」については、仕事の「成果(=結果)」を評価し、その結果の度合いによって賃金を決定する仕組みと定義できます。どのような社員であっても、自らの仕事(職務・役割)で期待されている成果(=期待成果)とういものが存在します。最も分かりやすい職種で言えば、営業職における「数値目標」になるでしょう。一方で、ルーティンが主業である事務職であっても、「担当している●●業務(例:人事であれば給与計算業務、勤怠集計業務・・・)を"期日"までに"ミスなく"完了させる」などの期待成果が存在します。繰り返しになりますが、どのような職種・階層の仕事(=ジョブ)であっても、(後述の結果成果ではなく)「期待成果」は必ず存在するのです。

そして、その「期待成果」に対して「実際の成果がどの程度であったか?」を評価し、その結果次第で賃金を中心とした処遇にメリハリをつけるのが、この「成果主義人事」の本質になります。後述する「ジョブ型人事」との違いを整理する上では、実はこの点が重要なポイントになります。あくまでも、「期待成果に対する"実際の成果の有無・程度"」で処遇をするという点です。

この本来的な「成果主事人事」の下では、例えば、2億円の期待成果を負っている営業社員については、「2億円の期待成果」で処遇を決定するのではありません。この社員が、定められた期間内で最終的には1億円の成果しか挙げることができなければ、「期待成果の半分の実績」という評価によって処遇を決定することになります。従って、(一般的な成果主義人事の仕組みの下では、)「賞与が標準賞与の半分になる」、「給与がマイナス改定になる」・・・などの厳しい処遇が適用されることになるでしょう。

事務職の場合も同じです。本来的な「成果主義人事」の場合には、「給与計算業務と勤怠集計業務を期日までにミスなく行う」という期待成果ではなく、「当該業務の遂行過程において、実際に期日に遅れることはなかったか?ミスはなかったか?」を評価し、その結果によって処遇を決定します。例えば、もしこの社員が期日・正確性は完璧に遵守していれば、少なくとも標準以上の評価と処遇を得られることになるでしょう。

 

このように、本来の「成果主義人事」というのは、"期待成果"や"成果創出までのプロセス"ではなく、"最終的な結果・実績(=結果成果)"にフォーカスして処遇を決定する仕組み、になります(※少なくとも、筆者はそのように考えます)。そして、今話題の「ジョブ型人事」との根本的な部分での制度的差異を明確にする上では、この当たり前の制度論をしっかりと押さえておくことが重要になります。

 

次回のブログでは、もう一方の「ジョブ型人事」について、その具体的な制度的特徴に触れることで、上述した「成果主義人事」とは根本的・本質的にどう異なるのか、解説したいと思います。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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