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制度の違いによるコスト比較は?

制度の違いによるコスト比較は?
ありがとうございます。なんとなく今の適格年金と同じくらいの、という感覚的な議論で経営会議では話ししていましたが、先生の示されたコストの押さえ方でその妥当性が確認できました。さて、2つ目の宿題として、確定拠出年金の方が中退共よりもローコストだった場合どうするか、ということがありましたが、経営会議ではこれについては結論が出ていません。コストを実際に出して比較してみないと、経営陣には判断できないようです。前回も報告しましたように、経営会議ではどちらかというと中退共派が多いのですが、なかには「確定拠出年金の方がコスト面でよほどのメリットがあるのなら前向きに考えてもよいのでは」という意見も出ました。そこで、制度によるコストを把握したいと思います。

まずコストの詳細を把握する前に言えることは、貴社の積立不足の大きさを考えると、制度がどのようなものであれ、現在の支給水準を維持している限りはそう大きくコストは変わらないということです。なぜなら、制度変更後の将来分については制度によりコストの差は出てきますが、積立不足償却コストはどのような制度であれ同じように負担が生じるからです。

ではまず将来分としてのコスト比較を考察しましょう。【図表2】のグラフを見てください。

これは、確定拠出年金制度の予定利率1%、2%、3%及び現在1%の予定利率における中退共の合計4つのパターンを同じ掛金で実施した場合の給付倍率、すなわち元本(掛金・拠出額)に対して給付モデルが何%になるかを比較したものです。ここでは確定拠出年金をDC(Defined Contributionの略)と表現しています。これはいわば制度ごとのコストパフォーマンスです。もちろん掛金・拠出額は4パターンとも同額でかつ40年間定額としています。ただし確定拠出年金については、ランニングコストとして一定の手数料がかかりますので、その分は年間5,000円として加味しています。また中退共新規加入に伴う国からの助成金があればさらにコスト安となるわけですが、今回は適格年金からの移行ですので助成金の適用外となります。これを見ると、同じ拠出金額でも年数が経つにつれて受給額に大きな開きが出ることが分かります。このグラフからは、

  • 中退共とDC1%モデルは同じ1%とはいえ、手数料分中退共の方が有利である
  • 中退共とDC2%モデルとでは、パフォーマンスに大きな開きが生じる
  • DCは設定する予定利率が高ければ高いほど、給付モデルは大きくなる

ということが導き出せます。

このことから逆算して、1,200万円の給付モデルに向けて毎年定額の拠出をする場合を想定すると、次の計算が可能です【図表3】。

【図表3 1,200万円給与モデルの拠出額計算例】

モデル 元本合計 1年あたりコスト
中退共モデル 1,200万円÷123.3%=973万円 973万円÷40年=24.3万円
DC1%モデル 1,200万円÷117.9%=1,018万円 1,018万円÷40年=25.5万円
DC2%モデル 1,200万円÷146.4%=820万円 820万円÷40=20.5万円
DC3%モデル 1,200万円÷183.7%=653万円 653万円÷40年=16.3万円
※単純積立 1,200万円÷100.0%= 1,200万円 1,200万円÷40年 = 30.0万円

※単純積立は利息分なしで元本のみで積立をしていく場合を想定

上記より、定額で実施した場合は明らかに確定拠出年金、それも予定利率を高く設定できた方がローコストで運営できることが分かります。

説明できていませんでしたが、確定拠出年金における予定利率というのは、1人ひとりに拠出された資産を何パーセントで運用するかという想定利回りのことです。現在の低金利下ではかつてのような5~6%での運用は当面見込めませんが、経済環境の変化とともに金利は変動します。もし確定拠出年金を導入しようと思えば、過去の金利変動を参考に長期予測での予定利率を労使合意にもとづいて設定しなければなりません。導入事例をみますと、10年もの新発国債の過去10年を参考にするなどして、1.5~3%程度で設定している企業が多いようです。

以上、中退共と確定拠出年金のコスト比較をシミュレーションしてみましたが、注意しなければならないのは、さきほどの計算はあくまで定額(全社員同じ掛金・拠出額)とした場合の想定です。定額ということは、社員の年齢構成がどうあろうと社員数が同じであれば総拠出額は同じになりますが、定額以外の掛金決定方法を採用すると、仮に現在も10年後も同じ社員数であっても、その構成内容によって総拠出額は変化することに注意してください。

【図表4 H社 中退共の掛金設定と給付額シュミレーションの例(等級別掛金の場合)

等級 モデル
年数
掛金(A) 給付額(円) 現行制度との差額概算(円) 現在人数(B) 掛金総額見積り
 A×B(円)
1等級 2 5,000円 120,000 + 70,000 24 120,000
2等級 4 8,000円 513,060 + 40,000 31 248,000
3等級 6 16,000円 1,730,610 +200,000 27 430,000
4等級 6 20,000円 3,336,930 -123,000 19 380,000
5等級 10 26,000円 6,985,010 -200,000 11 286,000
6等級 12 30,000円 12,477,920 - 30,000 8 240,000
        合計 120 1,706,000

(1人当たり  14,217円)

例えば、確定拠出年金の掛金を給与の一定率によって決める場合には、社内のモデル社員を設定してその給与の変化を予測しながら掛金をシミュレーションしなければなりません。また中退共でも同様のことがいえます。中退共はご存知のとおり掛金が5,000円~30,000円まで決まっていますが、実際は給与や等級・役職などとの関連づけのもとに個人別の掛金が設定されることとなります。そこで社内のモデル設定をし、掛金がどのように変化するかを把握しなければなりません。参考のために、貴社とほぼ同じ規模、退職金水準を持っているH社の中退共での掛金設定の例を掲載しますので、貴社でもこのようなルールを設定し、給付額が1200万円に見合うかどうかの検証をしてみてください【図表4】。なお、このようなシミュレーションは中退共のホームページでも実施できますので、参考にしてください。(http://chutaikyo.taishokukin.go.jp

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