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退職金の許容コストは?

退職金の許容コストは?
前回3つの宿題をもらっていました。1つ目は、今後の経営計画においてどれくらいの退職給付に関連するコストを許容できるかということでした。そこで現在の適格年金の年間掛金を調べてみたところ約3600万円、全社員120人なので、1人当たりにすると年間30万円、月2.5万円です。経営会議の中でこのデータをもとに「今後退職金のために負担できるコスト」について起案しましたが、結論としては1人あたりのコストを目安に現在の2.5万とすることが確認されました。おそらくそのまま適格年金を継続すれば、積立不足のための償却負担が増えるだろうという自分なりの見通しも報告し、掛金増額が発生する前に早めに制度移行をすることについても再確認ができました。

経営会議の中で経営陣を上手にリードしたようですね。実際は新制度モデルを作って、それに伴うコスト計算をするのが通常ですが、その前に経営判断の目安としてコストの許容範囲を意識してもらった方が後々スムーズに事が運びます。

さて退職給付コストに関する考え方ですが、利益との相関からの観点と給付額からの観点の両方が必要です。「1人当たり経常利益」という経営指標が社内で確立していれば、利益との相関については「1人あたり経常利益」と「1人あたり退職給付コスト」の比較でみるとよいでしょう。退職金に焦点を当てた「退職給付コスト負担前経常利益」という概念を用いて考えてみますと、その内容は

退職給付コスト負担前経常利益 = 退職給付コスト(A) + 経常利益(B)

となります。これを社員数で割ったものが【図表1】で示す「年間1人当たり退職給付コスト負担前経常利益」です。 貴社の数値を見ますと、ほぼ【図表1】のような構成になっていることが分かります。このままでは「退職給付コスト負担前経常利益」が33%ダウンすると、ほぼ利益はゼロとなってしまいますね。目安としては、退職給付コストは(A)+(B)の50%以下を目指すのが妥当でしょう。そもそも貴社では1人当たり経常利益が年間15万円と少なすぎます。退職金制度改革の一方で、いかに収益を上げるか、1人当たりの生産性を上げるかということがより重要な課題であることを忘れないでください。今回の場合は、今後は収益力アップを目指すという前提で年間許容コストを30万円としておきましょう。なお、貴社のように100%適格年金の場合はコスト計算が容易にできますが、一時金の場合は年度によって実際の負担額は違ってきます。できれば、退職給付債務による計算をして、一時金制度から必要とされる年間退職金コスト(勤務費用)を算出するのがよいでしょう。

一方、給付額からのコスト計算としては、モデルとなる定年退職1200万円の支給水準と定年までのモデル勤続年数より年間の必要な積立額を逆算する方法があります。その場合、利息分は除外します。

貴社のモデルから計算したものが上記の式ですが、さきほどの許容コストとぴったり一致しましたね。実際は、これに利息分を加味するとさらに元本としての積立負担は減るはずです。

さて、利益からみた場合と給付モデルから見た場合、両方とも30万円(年間、1人当たり)という数値が浮かんできましたので、これを今後の許容コストとするのは妥当なラインといえます。