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中退共への移行の方法は?

中退共への移行の方法は?
確定拠出年金への移行については、適格年金の解散スキームも含めて概要を理解しました。既得権や財務面への影響もあって、なかなか簡単には決められないように思います。新制度をどのような制度にするかも含め、もっと社内で議論しないといけません。そこで、確定拠出年金への移行はさておき、もう一つの中退共への移行はどのようなものか、その留意点は何か、を教えてください。

では、同じように中退共に移行する基本的な考え方、流れを解説しましょう。図表にあったように、中退共と確定拠出年金と、ともに適格年金からの移行を考える場合の最も大きな違いは「積立不足の償却の必要性があるか、ないか」です。断っておきますが、これは中退共では積立不足を放置しておいてよいというわけではありません。特に貴社のように、100%適格年金で実施してきた退職金制度において、積立不足がある状態のまま中退共に移行しても、本来の退職金制度水準を維持するための不足分は依然として残っているわけですから、積立不足が解消されることにはなりません。単に移行手続き上、積立不足の解消を求められないというだけなのです。【図表6】

ポイントとなるところを2点解説しましょう。

(1)引渡金額の決定について
中退共から提示されている「引渡早見表」はタテに通算月数(最大120ヶ月)とヨコに掛金があって、社員1人ひとりについて、タテとヨコの交わる金額が引渡金額(最高約380万)となります。つまり、通算月数の設定を通じて、これまで中退共に何年加入していたとみなすか、を決定しながら移行を進めることになるわけです。この場合の問題点として、

  • 適格年金の解約分配額が380万を超えている場合は、余剰金は本人に精算支給される
  • 同様に、勤続10年(120ヶ月)を超えている場合は、余剰金が発生することがある
  • 今後の個人別の掛金をいくらにするかを勘案しながら、早見表から最も近い金額をみつけなければならない
  • 早見表と実際の引渡し額の端数は少額ながら本人に精算支給される

といったことが挙げられます。 では、少し中退共への移行の具体例を用いながら解説します。例として、Aさん(勤続20年、適格年金分配額350万)を取り上げます。まず原則論をお話ししますので、これを基本に応用ということになります。

勤続20年(正確には適格年金の被保険者期間)ですから、本来は20年分の通算といきたいところですが、残念ながら10年(120ヶ月)分しか引き渡すことができません。また今後中退共にて制度運用する場合、Aさん自身への掛金を新たな社内ルールに則り2万と決めても、2万円の120ヶ月の引渡金額は約252万ですので、350万とは開きが出てしまいます。そこで、掛金を上げて28,000円とすれば、おおよそ分配額と見合う水準に落ち着くことがわかります。【図表7】本来は2万円の掛金とすべきところを28,000円としており、中退共の移行では他制度にはないこのようなジレンマが発生します。この回避策として一旦2万8,000円で引渡を済ませ、後から掛金の見直し(この場合は減額)をする方法がとられます。詳しくは、中退共に直接問い合わせてください。

さて、中退共への移行の流れは次のとおりです。なお、中退共の場合は、適格年金からの「引渡し」という用語を用います。

【図表7 Aさんの掛金の見直し】

  年齢 勤続
年数
適格年金
分配額
掛金 引渡額 差額 コメント
Aさん 40歳 20年 3,500,000円 20,000円 2,522,400円 -977,600円 差額が大きいので掛金の見直しが必要である

  年齢 勤続
年数
適格年金
分配額
掛金 引渡額 差額 コメント
Aさん 40歳 20年 3,500,000円 28,000円 3,531,360円 +31,360円 掛金をアップせざるをえない

(2)今後の積立不足の運営について
さきほど述べたもともとの積立不足を中退共でカバーしようと思えば、必然的に掛金を増額して、将来の給付額にマッチングさせる作業が必要になります。そこで、今後は積立不足をも吸収できるような掛金のルールを設定しなければなりません。コンサルティングの現場では、何度もシミュレーションを重ねながら現在の給付水準に合わせた中退共の掛金ルールを最終決定していきます。 またこの場合は、あくまでも中退共は退職金規程の積立手段としての活用ですが、別形態として中退共からの支給額を自社の退職金制度とする方法もあります。いわば「中退共払いきり」の退職金制度です。【図表8】この方法によれば、会社の追加負担が生じないという点で確定拠出年金の性質を一部取り入れたものとなりますね。もちろん既得権とのギャップが生じないよう、十分に配慮しなければならないことはいうまでもありません。実際のシミュレーションの例を掲載しましたので参考にしてください。