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適格年金の移行先の洗い出しと絞り込み

適格年金の移行先の洗い出しと絞り込み
適格年金を2012年までに廃止あるいは他制度に移行しなければならないことは既に何度も解説がありました。そして移行先には複数の候補があるようです。そこで、どんな移行先が候補として挙げられるのか、その選択のポイントも教えてください。

ではまずどんな移行先があるかを見てみましょう。企業年金の再編についてはすでに第1回目で述べましたね。復習しますと、これまでの企業年金の2本柱であった適格年金と厚生年金基金は、確定給付企業年金・確定拠出年金・厚生年金基金の3つに再編されました(11月号P101)。そこで、適格年金からの移行先としては再編後の3つの企業年金への移行が考えられます。ただし、厚生年金基金の年金財政難については既に述べてきたとおりで、また中小企業では単独設立は現実的に無理であり、いまさら総合型への加入も考えにくく、移行先の対象としての厚生年金基金はかなり特殊なケースを除いて度外視すべきでしょう。

また、企業年金以外の移行先としては中小企業退職金共済(以下「中退共」)があります。中退共は企業年金とは性格が違いますが、独立法人勤労者退職金共済機構によって運営されている公的な制度です。 ここで確認しておきたいことがあります。適格年金を他制度に移行するという行為は単に新制度に切り替えるだけでなく、これまで蓄積してきた適格年金資産を他制度に移す行為が伴うということです。そこには、適格年金側の資産移換の条件と、受け皿となる新制度側の資産受け入れ条件とがあり、出す側と受ける側の両方の条件をクリアしなければなりません。適格年金の資産移換を伴う受け皿としては、確定給付企業年金・確定拠出年金・中退共の3つに絞られます。

一方、資産移換を伴わず適格年金を解約して他制度を新規導入する方法や前払い制なども、適格年金に代わる「広義の移行」として認められるでしょう。実際には、単独制度への移行だけでなく複数の組み合わせや段階的移行、また過去分と将来分の区別の有無など、様々なバリエーションが考えられることとなり、各企業はその選択肢の中から方向性を見出さなければなりません。

制度にはそれぞれ特徴があり、また適格年金からの移行に関する条件なども違います。またコストや制約条件以外に、経営者や社員の制度に対する「好み」も重要な要素です。例えば確定拠出年金の場合、運用責任を社員が負うことになるわけですが、投資になじみの無い社員への適用を敬遠する傾向もみられます。「うちの社員に株や投信なんてできない」というのがそれです。また中退共は企業規模や資本金などによって自ずと加入に制限があります。

【図表2 中退共の加入条件】

加入条件 製造業 :従業員300人以下または資本金3億円以下
卸売業 :従業員100人以下または資本金1億円以下
サービス業:従業員100人以下または資本金5千万円以下
小売業 :従業員50人以下または資本金5千万円以下

それぞれの制度を理解するのにも時間がかかり、ましてやその比較の上でどれかを選ぶというのはかなりの労力を伴います。移行後のランニングコストの比較や労使合意の必要性の有無等、他にも重要な検討要素がありますが、まず適格年金の移行の面で生じる3つの観点によって比較をしてみましょう。

【図表3 選択パターンと選択の観点】

移行先制度 退職金規定との関連性 追加資金の必要性 移換限度額の有無
確定給付企業年金
(規約型)
・適格年金と同等移行の場合でも、退職金規程の一部見直しが必要となる ・適格年金に積立不足がある場合、一括または一定期間における償却が必要 ・原則として適格年金資産を継承することができる
確定拠出年金 ・独立規約を設け、退職金規程との関係性の見直しが必要となる ・原則として積立不足のある状態では移行できず不足分の償却が必要 ・確定拠出年金側の拠出限度額(18,000円か36,000円)による上限がある
中共退 ・退職金制度の内枠としての導入がスムーズである
・中共退そのものを自社の退職金制度とすることも可能(払いきり制度)
・移行に際しては積立不足の有無を問わない ・過去10年の通算期間内での移換となり限度額が低い(ただし、来年度改正により限度額撤廃の可能性あり)
前払い制 ・退職金規程との調整を要する ・適格年金の解約が発生し、前払い制相当分との調整が必要である ・特に制約はない

1)現退職金規程もしくは新しく導入しようとしている退職金規程になじめる制度か
2)移行にあたっての追加資金がどれくらい必要か
3)適格年金の資産はそのまま移換できるか