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適格年金の財政状態を知るには?

適格年金の財政状態を知るには?
当社の適格年金は生命保険会社と契約しているようです。前任者によれば、半年前に生命保険の担当者が来て、当社の適格年金の積立不足についての説明をしていたそうです。私もそのときの資料を見たのですが、難しい専門用語や数字が並んでいてよく分かりません。「解読」の必要性はあるのでしょうか。

適格年金は会社が従業員のために拠出し、いわば退職金・年金の積立を行うものです。一方、社員が定年や自己都合などで退職する場合には、適格年金から支給されることとなり、その資金の出入りは契約している受託機関が管理しています。すなわち適格年金は、会社が実施する退職金・年金制度の運営を外部に委託している形態ともいえますね。そこで適格年金を運営する上では「財政」という考え方が出てきます。つまり「年金財政が良い」「積立不足が膨らみ財政が悪化している」という言い方がそれです。 認識しておかなければならないのは、適格年金は「確定給付タイプ」の年金制度であるということです。規程によって算定される給付を守り、そのために積立(掛金拠出)をするというのが前提になっています。したがって給付に見合う必要な積立をしつつ、途中で財政状態に異変が生じたら、掛金変更などの修正をしながら運営していかなければなりません。適格年金では一定期間(通常5年)ごとに財政再計算を行い、予定利率や掛金の見直しを行うこととなっています。なお、予定を組む際の前提となる基礎率としては予定利率・予定死亡率・予定脱退率・予定昇給率があります。

では具体的な財政を見てみましょう。適格年金の財政状態を知るには、受託機関が作成する適格年金の決算書を見る必要があります。これは毎年作成されますので、直近の決算書を探してそれを分析してみましょう。 【図表2】

分析の観点としては、次のことを押さえておきましょう。やや専門用語が多いので、注意深く分析してみてください。

適格年金決算書分析の観点

(1)予定利率はどのように組まれているか?
適格年金は企業が拠出した掛金を市場で運用することによって必要資金を満たしていきます。「予定利率」はその時の想定利回りのことで、法人税法施行規則に規定された「基準金利」を下回ってはならないこととなっています。

(2)一般勘定か特別勘定か?
「一般勘定」「特別勘定」とは、主に生命保険会社の資金運用に関する専門用語です。簡単に言うと、「一般勘定」とは一定の利回りは保証されている契約、「特別勘定」とは利回りの保証がない代わりに運用次第では高いパフォーマンス(収益)が得られるという違いがあります。現在の積立不足の拡大は「特別勘定」の運用悪化によるものともいえるでしょう。

(3)過去勤務債務(積立不足)の占める割合はどれくらいか?
過去勤務債務等の現在額÷(責任準備金+支払備金)で求めます。【図表2】の例によれば、26.7%に達しています。昨今の状況は平均して30~40%の積立不足がみられます。

(4)一人あたり月額掛金はどれくらいか?またそのうち、過去勤務債務に関わる負担はどれくらいか?
損益計算書にある「掛金収入」が会社が拠出した掛金の1年分です。そこで、その金額を社員数で割りかつ12ヶ月で割ると、一人あたりの平均月額掛金が計算できます。なおその中には、通常の掛金以外にも過去勤務債務(積立不足)を償却(穴埋め)するための掛金も含まれている場合が多いので、年金契約書によりそのウェイトを確認しておいてください。

(5)正味の運用利回りは何パーセントか? 予定利率との乖離はどれくらいか?

【図表2】の決算書で計算すると、0.84%となり、仮にこの適格年金契約の予定利率が5.5%だとすると、そのギャップはそのまま積立不足となることがわかります。(第1ステップ図4参照)また企業年金によっては、運用益どころか運用マイナスとなっているところもあるくらいで、ここ数年は非常に財政が悪化しています。

(6)適格年金の資産は、現時点で会社都合・自己都合で全員退職した場合の試算額に対してどれくらいか?
前回の分析で、会社都合・自己都合の要支給額を計算しました。それに対して適格年金資産がどれくらいあるかは、今後適格年金の移行を考える際のポイントとなります。