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退職金の法的位置づけは?

退職金の法的位置づけは?
はい、がんばります。まず規程分析ですよね。ここで質問ですが、退職金規程は就業規則と同じ扱いと見ていいのでしょうか。そもそも退職金規程は絶対に設けなければならないものなのでしょうか。また会社によっては退職金がない会社もあると聞いていますが、このような会社は法律違反にはならないのですか。

分析のスタートは規程分析からです。これは退職金規程の内容をしっかり読み、把握することでできます。その前に、退職金は労働法上どのような位置づけがなされているかを知る必要があります。

そもそも就業規則には、労働基準法第89条によって、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)と任意に記載する事項(相対的記載事項)が定められています。ここでいう任意という意味は、「その事項について定めがある場合には必ず記載しなければならない」という意味です。ですから厳密に言うと、会社でルールを設けているにもかかわらず就業規則に記載していないというのは許されないこととなっています。その中で、退職金制度は相対的記載事項に含まれています。【図表1】

【図表1 絶対的記載事項と相対的記載事項】

絶対的必要記載事項 相対的必要記載事項
・労働時間の開始及び終了の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
・賃金の決定・計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
・退職に関する事項
・退職手当について適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
・臨時の賃金等及び最低賃金額に関する事項
・労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
・安全及び衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰及び制裁の種類並びに程度に関する事項
・その他、その事業場の労働者のすべてに適用される事項

質問のような、いわゆる「退職金がない会社」を労働基準法に照らし合わせて解釈すると、会社に退職金に関するルールがないとみるべきでしょう。ただし一部の会社では、退職金規程はないけれども、退職金は払っているという例も見受けられます。社員にとって退職金がもらえるのだから特に規程がなくても問題ないのではないか、と思うかもしれませんが、これにはいくつか問題が残ります。

何よりも「不公平感が生じないか」という問題です。規程を持たない会社が、ある人には退職金を支給し、別の人には退職金を支給しなかったということになれば、それは社員の間で不公平感を招く原因にもなります。またその都度誰にいくら支給するかを決めるよりも、規程を作ることで経営者の悩みが半減します。

もう一つ税金の問題も関係がありますよ。退職金は、通常の給与などと違って、退職所得という特別な扱いとなり税制上の恩恵を受けることとなっています。ですから、社員がせっかくもらう退職金も退職所得扱いしてもらえないということになれば、税金分損することになりますね。こういった危険性もあるため、仮に退職金の支給実態があるのであれば、きちんと規程を設けるべきでしょう。

なお、就業規則との関係でいえば、退職金規程は親規程である就業規則の子規定という位置づけになります。別に就業規則の中に必要条文をそのまま載せてもいいのですが、多くの会社では賃金規程などと同様、独立させて規定化しているようです。

退職金には支給義務がないと言われると意外に思うかもしれませんね。にもかかわらず多くの企業では退職金制度を設け、支給をしています。その多くは「他社がそうしているから」「退職金がないわけにはいかないだろう」ということで、他社に引けをとらない程度に、どの時点かで誰かが規程を作っているのです。手元に退職金規程をお持ちであれば、ぜひ末尾を見てください。多くの規程には、制度発足の日付が書いてあります。創業して数年経った時点で制度ができていませんか。