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最近の企業年金事情とは?

最近の企業年金事情とは?
年金制度の意味あいがよく分かりました。ところで、当社が導入している適格年金はあと数年で廃止されると聞いています。また日本版401kと呼ばれる確定拠出年金など、新しい制度もできているようです。そうした企業年金に関する様々な情報を教えてください。

多くの人にはもともと制度名や専門用語になじみのない分野ですので、様々な情報を得ることはとても重要ですね。そもそも企業年金制度は一つの体系のもとに整備されていたわけではなく、いわゆるタテ割行政の弊害で、各関係省庁の主管によりそれぞれ別個に根拠法ができていました。例えば税制適格年金は、法人税法に規定された適格要件を満たし国税庁の承認が得られれば、税制面で優遇措置を受けられるという趣旨の制度で、言うまでもなく国税庁の管轄下にあります。一方の厚生年金基金は、同じ企業年金でももともと厚生年金保険に関連してできた制度ですので、厚生労働省(元厚生省)が管轄しています。ついでに言うと、退職金規程そのものは、れっきとした労働条件の一つですので、厚生労働省(元労働省)の範疇に入ります。 そしていくつかの要因により従来の企業年金にほころびが出始め、このようなバラバラの状態を体系的に整備しようとの動きが出て、その結果2001年に「企業年金ビッグバン」とも呼ばれる大改革が起きたのです。以下、企業年金に関するトピックスをあげてみましょう。

年金制度の積立不足問題

将来の退職金支払いのために導入されている年金制度では、受託した金融機関が預かった資金を株・債権などに投資し、一定の運用益を獲得しながら必要資金を確保することを前提に制度設計がなされています。ところが、マーケットの市況低迷によってここ数年はその運用結果が思わしくなく、当初に設計した前提が崩れ、このまま放っておくと積立不足は広がる一方となっています。【図2】

これまでの代表的な適格年金や厚生年金基金などは「確定給付型」と呼ばれ、将来の退職金支給額は計算によって決まってきますので、その額を確保しようと思えば、積立不足を穴埋めするために積立掛金をアップせざるを得ず、掛金引き上げに応じるか、このまま制度を維持するか否か、の判断を迫られています。

適格年金の移行問題

これまで全国で約7万社に採用され、企業年金の代表格ともいえる適格年金は、先ほどの積立不足の問題が発生したことにより制度維持が困難となってきました。加えて新しい年金制度が登場したことで、適格年金は2012年3月までに他制度に移行あるいは廃止しなければならなくなり、事実上消滅することとなったのです。適格年金を他制度に移行するということは、単に制度の乗り換えというだけでなく、退職金そのものの意義や全体の枠組みをも見直すきっかけともなっています。9年後のタイムリミットに向けて、移行への取り組みと退職金制度の見直しはますます進んでいくでしょう。

厚生年金基金の代行返上・解散

従来の企業年金のもう一つの柱として厚生年金基金があります。厚生年金基金とは、国の事業である厚生年金の運営を一部代行しながら、企業の年金制度を上乗せして運営していくしくみのことで、大手企業1社で運営している単独型、グループ企業による連合型、複数の企業が加入している総合型の3形態があります。  そして厚生年金基金もそのほとんどが積立不足に陥っており、支給額のカット、代行分を国に返すいわゆる「代行返上」、基金の解散等々、いまや基金問題は社会問題にさえなっています。  また総合型に加入している企業の立場からは、このまま基金に継続加入すべきかどうかの判断が迫られています。というのも、多くの基金では基金を脱退するにあたって積立不足を穴埋めするための多額の資金を支払わなくてはならず、継続加入した場合の追加負担との損得の判断が必要とされるからです。

確定拠出年金の登場

「日本版401k」といわれる確定拠出年金制度が、2001年10月よりスタートしました。これは、従来の確定給付型と違って、企業側は拠出する額を決めるのみで、最終的にいくら給付されるかは従業員の自己責任によって行われる運用の良し悪しが反映される新しいしくみです。確定拠出年金を採用することによって、企業側にとってはこれまで述べてきたような積立不足の発生は解消され、その穴埋めの必要性はなくなります。 一方では従業員の自己責任を求めることにもなり、そのための投資教育など従来にない取り組みが発生します。もし導入を考えようとするのであれば、このようなメリットとデメリットを十分に検討し、慎重に取り組まなければなりません。現在のところ認可数約500件にとどまっていますが、確定拠出年金は適格年金の移行先の有力候補でもあり、今後は大手企業だけでなく、中小企業でも導入を考えるところが増えていくでしょう。

退職給付会計の導入

グローバルスタンダード(世界標準)は会計の世界にも広がり、それまでの日本的経営に影響を及ぼすこととなりました。一連の「会計ビックバン」と呼ばれる会計制度改革は退職金にも及び、2001年3月期から「退職給付会計」という新しい会計制度が導入されることとなったのです。それまで簿外(会社の決算書には記載されていない、オフバランス)だった退職給付の債務をバランスシートに載せなければならず、それまで債務認識をしていなかった日本の大手企業は、これによって隠れ債務を表面に出さざるを得なくなりました。新会計基準は主として上場企業が適用対象となっているため、多くの中小企業にはなじみのないものとなっていますが、決して無関係というのではありません。今の退職金・年金制度の改革の流れは、大手企業の退職給付会計制度の導入に端を発していますが、会計基準を変更しようとしまいと、本質的に債務を負っている状態にはかわりないからです。

一例をあげると、2002年3月期の日立製作所では、大食給付債務約3兆7,000億円に対し、年金資産は約1兆5,000億円、差し引き2兆2,000億円は「積み立て不足」となっているそうです。上場企業においては9割以上が積み立て不足といわれています。 以上のように、この2~3年で年金制度の法整備が進み、選択幅が大きく変わりました。【図3】