ホーム > ブログ > 人事ブログ > 賃金設計講座(3): 賞与制度について⑥

関連ブログ
新着記事
カテゴリ
月別アーカイブ

賃金設計講座(3): 賞与制度について⑥

2015年11月10日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、賞与制度を設計する際の2つ目の観点(項目)である「評価間のメリハリ」について、その具体的な実施方法を中心に解説した。今回のブログにおいては、賞与制度を設計する際の3つ目の観点である「賞与原資算出ルール」について解説していくこととする。

■ 賞与原資の算出ルールとは?
賞与制度に関するブログで既に何度か述べているように、日本企業における賞与についてはその位置付けにおいて、程度の差こそあれ「業績配分的性質」が一定割合考慮されている。この「業績配分的性質」とは、主たる意味合いとしては「会社の業績によって賞与原資(賞与水準)をコントロールする」ということであり、その観点を賞与制度上で"仕組み"として落とし込むのであれば、会社業績連動の対象となる業績指標や業績対象期間、業績による格差などを設定することになる。
従って、当ブログのテーマである「賞与原資の算出ルール」については、会社業績や組織業績に応じて、支給季ごとの賞与原資(総原資、部門原資など)や賞与水準(月数、平均額など)をどのようなルールに基づいて決定するかを仕組み化したもの、と定義することができる。
もちろん、特に中小企業においては、賞与原資を算出するにあたり会社の業績を多少なりとも考慮はしているものの、そこに明確な根拠やルールが存在しないケースも多い。会社の業績は考慮しつつ、世間動向や前年(前支給季)の水準なども総合的に踏まえた上で、最終的には「社長の判断(意思決定)」で賞与の原資/水準等を決定するという流れである。これはこれで、中小企業の置かれている状況を考えれば、(ケースにもよるが)一定の理に適っていると言える。但し、この場合には、「仕組み化されたルール」に基づいているとは言い難い。

本稿では、「賞与原資算出ルール」というテーマで記述をしているため、「ルールの導入ありき」で考えていると思われるかもしれないが、必ずしもそういう訳ではない。なぜなら、以下に列挙するように、賞与原資や賞与水準を算出するにあたり、仕組みとしての明確なルールを設定すべきかどうかについては、メリットとデメリットの両端があるからである。
(※以下では、賞与原資算出ルールを「会社業績」と連動させる仕組みとして捉えている)

<賞与原資算出ルールを明確化/制度化する「メリット」
◆毎年の会社業績に応じて賞与原資(賞与水準)を客観的に変動させることができるため、
   人件費コントロールが行いやすい(⇒社員に説明しやすい)
◆会社業績と一定の算定式に基づいて客観的に賞与原資(水準)が決まるため、
   社員に対する動機付け効果が期待できる
◆会社業績に対する社員の意識・関心が高まることが期待できる

<賞与原資算出ルールを明確化/制度化する「デメリット(懸念点)」
◆算定式に基づいて賞与原資を機械的に算出することになるため、経営上の想定外の事態が生じた場合に、
   柔軟に対応できない恐れがある
◆業績指標と賞与原資の関係について、適切な落とし所を見出すのが難しい
◆制度導入後の数年間の業績が悪化した場合、それに伴って賞与原資も減少することになるため、
   その場合には制度が"やり玉"にあがってしまう恐れがある

上掲のように、メリットとデメリット(懸念点)の双方があるため、導入にあたっては十分な検討が必要ではあるものの、実際には中小企業も含めて導入している企業は数多くある。その際、デメリットをできるだけ払拭/抑制させると同時に、制度としてのメリットを最大限に創出させるような制度設計と運用を心がけることが大切であるということは、言うまでもないことである。

次回(以降)のブログでは、上記内容を踏まえた上で、賞与原資算出ルールの設計に向けたより具体的な解説をしていきたいと思う。

バックナンバー

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。